コラム

「原油価格の予想外の下落がもたらすもの」 2006年10月03日更新

7月にバーレル当り80ドル近い史上最高値をつけたN.Y.原油価格が、今度は60ドルすれすれまでに下がってきた。中東情勢が特に落ち着いてきたとも思えないが、資源価格全体が下降の傾向にあり世界経済の飽食感がその根底にあるのかもしれない。理由はともあれこの傾向が更に続くとすると日本の石油会社は大きな難問を抱えることになるだろう。

7月に原油価格が高騰したのをうけて石油各社は8月に石油製品卸価格の大幅な引き上げを行った。これを受けて末端ガソリン価格も約7円/lという値上げになった。原油価格が大幅にさがったのだから、今度は大幅な値下げを行うのが筋である。論理的には8月の値上げ幅を大きく超えた値下げが妥当と言えるだろう。しかし石油各社としてはこれまで折角努力して市場価格の引き上げを実現したのだから、そう簡単にはこれを崩したくなかろう。

では原油価格動向と関係なしに市場価格を維持できるかと言えば、これも談合を疑われるもとになりかねないので難しい。ある会社は10月においても市場価格の維持を表明したし、ある会社は4円程度の引き下げを発表しているが、いずれにせよ値下げをできるだけしたくない気持としては同じだろう。業転市場や先物市場では既に価格は大きく下げているので、石油各社がどれほど値下げに抵抗できるか、見通しはあまり明るくないのでは。

ところで石油各社にとっては市場価格以外にもっと重大な問題が存在している。
それは在庫評価額の変動だ。原油価格の上昇時には在庫評価額が上昇し仕入れ価格との差額が利益として計上される。これにより石油会社は実力をはるかに超えた利益を計上することになる。原油価格下降時にはちょうどこの逆となり在庫評価損を計上せざるを得ずこれが決算の足を大きく引っ張ることになる。

原油価格の下落が9月に起こったのも彼らにとっては不幸であり、中間決算においてこの評価損を計上しなくてはならない。石油会社の在庫が60日分あるとすれば、原油価格がバーレルあたり10ドル下がった場合の評価損は日本全体でおおよそ3,000億円と計算される。むろんこれがすべて9月決算で計上されるわけではないが、石油会社の経常利益額からすれば大きな負担となることに違いはない。

これが日本の石油会社にあたえる影響だが、目を海外に転じると興味ある問題が見えてくる。当然海外では原油価格の高騰時に大儲けしたものがいれば、下落時に大損した者もいる。もし例のビン・ラデイン氏が先物市場で資金調達をしていたとすれば、この下落でかなりの痛手を負っているはずである。とすればそろそろテロ計画の予告をするか、あるいは実際に大規模なテロを行って原油価格の上昇を狙うはずだ。はたして彼がどう動くか。

(一本杉)

おなまえ
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