2012.05.25 のニュース
不当廉売での運用強化を要望 ―公取委は、法的な解釈に止まる―
販売業界(全石、石商)から不当廉売の迎用強化策について、民主党石油流通問題懇談会と公正取引委員会に要望事項を提出していたが、その回答が公取委から提示された。だが、法的な説明に止まり、運用の強化には至っていない。
不当廉売の判断基準では、総販売原価(仕入価格十販売費十一般管理費)のうち、販売費および一般管理費については、いわゆる当該廉売対象商品に係わる変動費分しか認めていないため、従来とは変わっていない。そのため「SSを運営するに必要な人件費、リース料等、変動費以外の分についても価格・費用基準に加えるべきである」と要望していた。
公取委は「現行の運用基準である・廉売対象商品を供給しなければ発生しない費用は、企業としての合理性のない価格設定の範囲を明らかにしたものであり、それを上回る価格で商品で販売することは、企業としての一定の合理性がある」と回答。「競争法である独禁法の観点から違法と認定するのは困難であり、規制には、他の立法措置が必要。運用基準の引き上げでは、単に営業赤字を繰り返した企業であっても課徴金の対象になるおそれがある」と加えている。
次いで「廉売業者の仕入価格等をヒアリングするが、仕入伝票の現物確認をしていない。そのため仕入原価を割っているかどうか実質的に価格杷握できていないのが実態であり、関係種類の提出を義務づけるべきである」との要望に対しては、「不当廉売の申告数は8000件と多く、仕入価格の調査票の提出を求めているが、これに仕入伝票を加えた場合、提出しない業者の対応などからみて現在の人員(65名)では処理は困難であり、独禁法の違反の疑いがあると思料されほどの事実が認められなければ、強制権限を行使して伝票等の提出を義務づけることはできない」と説明している。ただし「過去1年間に注意3回を受けたSSに対しては仕入伝票の確認を行なう」としている。
また、「廉売業者が『注意』の測定を繰り返し受けても防止効果がないため、交通違反切符のように累積点数制を導入し、一定条件を満たす場合は警告等の厳格な措置を講じるべきである」との要望に対し、「『警告』は、法的措置を採るに足りる証拠を得るまでに至らなかったが、独禁法違反のおそれがあると判断された場合に適用。一方、『注意』は法違反に繋がるおそれのある行為がみられた場合に、未然防止の観点から注意を喚起するものである。法違反のおそれが認められた事案について行なうものではない」と警告と注意の違いを説明している。
『注意』案件については業者を公表すべきとの要望については、「仮に注意を行なった事業者を公表した場合、独禁法上の問題があったのではないかと第3者に受けとめられることは避けられない。注意対象者の正当な利益を害することから事業者名の公表は困難」との見解を示した。
公取委は平成16年に「ガソリンの流通実態調査」を実施、仕切価格と業帳市況との価格差を調査したが、「その後、流通実態の変化が生じているため改めて調査すべき」との要
望に対し、「仕切価格決定方式の改定など、最近の実態の変化を踏まえて取引実態や競争実態を調査する」と回答している。