2010.09.03 のニュース
石油税の増税で環境省と決着か -現行通りエネ特会計の活用で-
温暖化対策税(環境税)の創設案は、石油石炭税を増税することで、ほぼ決まったようである。経産省の来年度の税制改正要望で温暖化対策のために石油石炭税を強化(増税)するとの方針を示したことで、環境省との間で決着がついたようである。新税でなく既存の石油石炭税の税率を引き上げることで財源を確保することになれば、税の徴収も簡単であり、国民からの反発も少なく浸透する。
新税(温暖化対策税)となると法的な手続きなども必要であり時間もかかるが、増税となれば現行の法律で対応できるため手間もかからない。税収、歳出も現在のエネルギー対策特別会計(石油石炭特別会計)を活用するとしている。このエネルギー特別会計では、税収は一度、一般会計に入り、これを特別会計に繰り入れる方式をとっている。目的税となっているが、歳入分を全額予算に計上せず、一部は一般会計に残るシステムとなっている。一般会計に積み残した財源を予算要求の段階で財務省との間で取り合うことが、重要なポイントとなっているもの。
今回のように増税で決着することになれば、あとは財源を環境省と経産省が使途に応じて分け合うことになる。現在も年間約400億円を環境省に特別会計から流用させ、環境省が独自に予算を計上して執行している。しかし、環境省としては、独自の予算を確保するのが以前からの悲願であり、今回の温暖化対策基本法の施行を機に新税(温暖化対策税)の創設を狙っているもの。そのため環境省が所管する独自の予算確保案も予想されるが、現在、温暖化対策基本法は廃案となっており厳しい状況にある。
経産省案では石油石炭税を増税することになるが、引き上げ率は提示されず、今後検討することになる。最終益には、年末の税制大綱で決まるが、予算規模、使途を巡り、議論はこれからとなる。現行の石油税は2040円/KL(約2円/L)であるため、増税となれば、石油業界は薄く、広く、公平にすべきと要望しており、現行の2円/Lよりは小幅で1円程度の増税が予想されている。石炭、LPG、LNGなどにも公平に増税となる。
増税の狙いはCO2の抑制となる追加的な対策を実施することにある。以前は増税により石油製品が値上がり、価格効果で石油の消費を抑えることを見込んでいたが、08年の原油価格高騰で効果がないことが実証された。そのため環境税構想は後退したが、民主党政権による25%のCO2削減の中期目標実施で浮上してきた。
増税による財源の使途は、①省エネルギーの推進、②再生可能エネルギーの普及、③低炭素技術の開発、となる。環境対策という名目でバラマキ予算を計上すれば限りがないが、技術開発はすでに年間1兆円も投入しており、これ以上投資しても費用対効果は少ない。一方、省エネルギー対策に補助金の支給、全量買取制度、排出量取引制度に対する支援となると巨額な予算が必要となるため、過大な税負担にならないような配慮が必要となる。
これから年末に向けて議論となるが、足元では民主党が代表選を控えて混乱しており、その結果、分裂して政界再編となると、すべてが流れることになる。