日刊ニュース

2012.12.14 のニュース

難しい灯油の需給バランス -安定供給と供給不足は僅差-

寒波の襲来で灯油の荷動きが活発化しており、在庫(8日)は261万㌔㍑と前週に比べ22万㌔㍑減少、前年比では90万㌔㍑減となっている。灯油在庫の取り崩しは11月から始まるが、今年は例年に比べると冷え込みが厳しく増販が見込まれている。日本海側の各地では、大雪による道路、交通機関への影響が出ているが、供給面での問題はない。灯油の在庫が減少しても、各社とも増産、輸入で対応するため供給不足になることはない。本格的なシーズン入りで、今後は思惑絡みで値動きも活発化するが、石連週報によって毎週の需給が公表されていることもあり、在庫数量の動向がハッキリしていることから、噂や思惑が絡んだ動きは是正されている。
 灯油販売は、短期決戦であるため、需給をみながら、売り・買いのタイミングを探る必要があり、当たれば増益、外れると大損となるリスクを伴う。そのため灯油専門の大手業者、商社、薪炭商などは常に天候、需給をみながら商戦に臨んでいる。寒冷地、郊外地では、SS業者も冬場の灯油販売増益を見込んで年間の経営計画を組んでいるため、灯油販売は重要であり関心が強い。電気、ガスの攻勢で減販傾向にあるが、冷え込み次第では増販、増益が見込める。
 適正マージンを確保するには需給がタイトであることが望まれる。しかし、灯油などの石油製品の需給は、一滴でも多いと供給増となり、逆に一滴でも少ないとパニックとなるため、需給を常に適正化することは難しい。東日本大震災の際には、供給不足からパニック状況となっが、石油業界が総力をあげて安定供給に努めたことで、石油の役割、重要性が評価された。同時に適正な値取りができていた。だがこれも2ヵ月を過ぎると、各社が増産しつつ輸出を抑えて供給を確保したことが裏目に出て、供給増となり安値競争が展開された。このように、供給増と供給不足は紙一重である。今冬はシーズン前から低在庫で臨んでおり、さらに寒波も襲来しているため需給は締まっている。今後もこの寒さが続け
ば、増販となり、マージンも確保できそうである。
 灯油の需給は、在庫が低水準であることがポイントとなるが、安定供給という立場からは多くの問題も残る。冬場の積雪や吹雪、悪天候によって、ローリーの運行や内航タンカーの運航に支障が生じることで、供給が途絶える危険性を孕んでいる。製油所、油槽所の在庫に余力があっても積雪で道路が寸断されればローリーが動かず、SS、ユーザーヘの供給ができなくなる。とくに山間僻地などではこうした傾向が顕著となる。また、内航タンカーも天候が荒れると運航が難しくなり、油槽所への接岸ができないことで荷揚げできず、滞船するなどの影響が出る。このように、供給余力があっても輸送面で支障が生じると供給不足が生じる。
 また、ユーザーに対しての灯油の供給では、SSが減少しているため過疎地での供給不足が問題となっている。高齢化が進み。灯油の持ち運びもできず、配達する業者もなくなる状況で、暖房ができないなどの問題が提起されている。さらに冷え込みが厳しくなり、積雪で閉じ込められるケースもあるため、緊急時に備えた灯油の供給体制を早急に考える
べきである。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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