2013.08.22 のニュース
業転扱いルール策定は困難-政治的な判断に委ねる公算も-
公正取引委員会は「ガソリンの取引に関する調査報告書」のなかで、元売に対して「業転玉の扱いを制限・禁止するのではなく、一定のルールを策定する必要がある」との改善策を求めている。元売は、回答を提示するが、ルール策定にあたって業転の購入を容認することは難しいとの立場をとることになる。元売はマーク(ブランド)によって、SSで販売するガソリンなどの品質保証、安定供給を保障しており、ユーザーを保護している。そのため元売マークという商標権を持つことによって、他社の製品(業転)の購入・販売を禁止しているが、これを認めることは系列販売を放棄することになるため、ルールを策定することは不可能であるとしている。そのため、この問題は明解な回答を得ることは難しく、政治的な決着に委ねられる公算が強い。
報告書では「業転の扱いを一律に禁止することは、元売のブランド価値や商標権の観点からのものであっても、元売により、業転玉がPBSSに安定供給されており、かつ、系列玉と業転玉の価格差が状態化している状況においては公正な競争環境の整備には悪い影響をおよぼしかねない」と指摘している。商社など通じてPBSSに対し、系列よりも安く安定的にガソリンが供給されていることは、公正な競争を阻害するとしており、元売に価格差の是正を求めている。販売業者からも、業転玉と系列玉との価格差の是正(ブランド料の引き下げ)を要請する意見が出ているが、報告書でも販売業者の意見と流通実態を認めている。
しかし、この業転安の実態を容認して、系列業者が業転玉を自由に購入するためのルールを策定することになれば、系列販売が崩壊することになり、元売としては、阻止するのは当然である。仮に百歩譲ってルールを策定するにしても、業転の定義とは何か、認めるとなると、その基準を、どう設けるのか、「何%まで容認」など数値を設けることが可能か、元売、販売業者が納得する話し合いが成立することは難しく、多くの問題点を抱えている。公取委も「公正な競争環境の整備という観点から、まずは関係者間で適切な対応を促す必要がある」としているが、元売と販売業者間で調整がつくことは難しい。
今回は、自民党石油流通問題議員連盟による働きかけも強く、公取委の報告書の提示で、元売に回答を求めている。公取委が流通問題を深く分析、問題点を指摘したことを、販売業者サイドでは評価している。だが、業転玉の自由な購入を求めるよりも、本音のところは、業転と系列との価格差の是正を要望している。
系列販売は90%を占めており、実際に業転玉を扱うことが可能となっても、安定供給、品質保証の問題もあり、業転の購入となると、現金取引きとなるため運転資金が必要となる。確かに業転は安いが常に安値とは限らず、需給がタイト、緊急需給時となれば系列よりも高値となり、リスクが伴うなどのデメリットも多い。そのため、簡単には業転を購入することはできない。すでに業転を購入している業者は、リスクを承知で購入しており、これらPBSS、無印SSなどは、業転高となると不利となるため、別の分野での攻防が展開されることになる。