2014.05.07 のニュース
新政策 需要側の「自衛的備蓄」の推進-石油の緊急時供給体制を構築-
総合エネ調の石油・天然ガス小委で、石油の緊急時供給体制(備蓄政策)の新政策として、①需要側における「自衛的備蓄」の推進、②アジア共同備蓄計画などが検討されることになった。基本的問題として内需が減少する中で、石油備蓄の総量を今後も維持すべきか否かも議論する。
備蓄政策として緊急時での供給サイド(石油業界)の取組みだけでなく、ユーザーが備蓄を保有することで、被災直後(3日程度)での供給途絶をしのぐ「自衛的備蓄」を持つべきとして、提案されているもの。この提案は、石油連盟の「災害時を考慮して学校、公民館などにおける石油利用システム、機器の導入に対して政策支援を強化すべきである。また、災害発生初期の混乱を回避するためにも、最終需要家への燃料備蓄を働きかけることが必要である」との提言を受けたものである。
東日本大震災の経験からも、災害発生直後は道路、航路のインフラが寸断され石油の供給が難しくなるため、インフラが復旧するまでは、ユーザーサイドで備蓄を保有すべきとしているものである。
また、エネルギー基本計画では「被災直後の交通網の混乱を想定すれば、供給サイドの取組みだけでは石油・LPGの供給を行なうことは難しく、社会の重要なインフラとなる政府、自治体庁舎、通信、放送、金融、病院、学校、避難所などの設備、中山間地帯などでは、需要サイドで自衛のための備蓄を保有すべきある」と指摘している。
これらの「自衛的備蓄」を推進するための方策や、そのコストを誰が負担するかなどが今後の問題となるが、これら関係機関(需要家)に対して、現状を把握するための調査を今年度予算で実施中であり、その結果をみて、対策(助成策)を打ち出すことになる。さらに「各事業者、世帯レベルでは、自家用車へのガソリン、軽油のこまめな補給や灯油の備蓄を促す」と加えている。
東日本大震災を機に、東北地区では、石商活動として「車には常に満タンにする」よう呼びかける運動を実施した。だが、供給が安定している現在ではユーザーの関心も薄れているため、今後も恒久的に展開することになった。ただ、高値による節約志向で満タン給油は減少しており、数量を指定する限定給油が増加しているのが実態である。
また、軽油の場合は大手運送、バス会社などは自家用のタンク(給油施設)を保有しているが、目的は大口仕入によるコストダウンのためであり、自衛的備蓄ではない。本格的な備蓄となるとコストもかかるとの問題が生じる。家庭用の灯油は消防法の数量規制もあり限界もある。さらに高値となると備蓄は少なくなる。
新政策としてのアジアでの共同備蓄計画については、「急速に高まる石油需要に対してのエネルギーセキュリティの向上はわが国の利益に寄与する」として、ERIA(東アジア経済の推進を目的とした政策提言機関)と連携して石油備蓄・危機管理体制の強化に向けた枠組みのあり方の検討、各国の現状と課題の調査研究を実施するため調整中である。調査結果を活用しつつ、協力の方向で取り組むことになるが、各国の管理体制、備蓄能力などの違いもあるため、実現に向けての調整には時間もかかる。