2015.02.03 のニュース
不正行為の全容を明らかに
先ごろ、石油業界が長年にわたって地道に積み上げてきた消費者からの信頼感を打ち壊すような事案が発生した。民放テレビ局の夕方の報道番組で、昭和シェル石油の100%子会社である東京シェルパックにおいて、灯油の巡回販売を行う業務委託販売員が給油量をごまかして販売し、月に数十万円を着服していた者が複数いることが判明した。
番組ではその不正の実態を生々しく報道。灯油18㍑分の現金およそ1800円を受け取りながら実際には17㍑程度しか給油せず、差額の100円を着服していた。はじめはミスだと主張していた販売員も、記者の追及に給油量のごまかしによる差額分の着服を認め、不正による収入は月30~40万円に上ることを吐露した。一方で「会社も黙認していた」と語り、会社ぐるみで不正を見逃していたかのような発言までしていた。
この報道が事実であれば、れっきとした犯罪、詐欺行為であり、決して許される行為ではない。さらに会社が消費者を欺く不正行為を長年にわたって知りながら、黙認していたとすれば、これはもう一個人の不正行為だけでは済まされない。
もっと恐ろしいのは、こうした不正行為が「業界内で日常的に行われているのではないか」と、消費者にあらぬ疑念を抱かせてしまうことである。東日本大震災を教訓に昨年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画において、石油は『今後とも活用していく重要なエネルギー源』、『エネルギー供給の“最後の砦”』と、その重要性が再認識されたにもかかわらず、こうした不正行為によって、国民生活を守る石油の安定供給を担ってきた石油業界に対する消費者の信頼感が一気に雲散霧消しかねない。
企業を巡る不祥事や不正事件などが発生するたびに、コンプライアンス(法令遵守)とともに、CSR(企業の社会的責任)が大きくクローズアップされる。法律や規則を守り商活動を行うことは、企業としての“最低限の義務”である。
東京シェルパックでは「再発防止策を講じ、お客様の信頼回復に全力を挙げて務めてまいります」とのコメントを発表しているが、黙認していた事実があるのかどうかも含めて不正行為の実態を明らかにしてもらいたい。親会社である昭和シェル石油にも、2度とこうした不正行為が行われないよう、徹底して全容を解明し、説明責任を果たしてほしい。