2015.04.20 のニュース
地場SSの存在感アピールを
東日本大震災直後、かろうじて深刻な被害を免れ営業を再開した地場SSには、渋滞を引き起こすほどの長い車の列ができた。灯油のポリ缶を持った人達が、SSの敷地から大きくはみ出すほど長蛇の列を成した。車で暖をとる人達にとってはガソリンが、避難所や停電が続く自宅で過ごす人達にとっては灯油が、文字どおり“命の一滴”の重みを持っていたからだ。
その後も様々な災害に際し、地場SSは存在感を示してきた。豪雪に見舞われた河口湖町では、町と地元支部との災害時協定に基づいた連携によって混乱を回避した。徳島では県の要請に応えて、組合員SSが大雪のため立ち往生した車への燃料供給に奔走した。また自然災害ではなかったが、長野で大規模停電が発生する中、地元の中核SSが自家発電機による燃料供給体制を整え緊急時対応を披露した。地場SSの存在感は、揺るがないものに思えた。
ところが、SSが地域社会にとって必要不可欠の重要なインフラであり、地元自治体との協定が有効に機能していると実感できるこうした事例が各地で次々と示される一方で、逆に、自治体や消防・警察などによって地場SSの存在が蔑ろにされ、地元とは無縁の業者に地場市場を蹂躙されるケースが、一部地域とはいえ散見されるようになっている。
この最たるケースが、先ごろ発生した神奈川県警による発券店値付けカードの採用だろう。神奈川県警という舞台設定も、発券店値付けカードという道具立ても、今後の展開に不安を感じざるを得ないシナリオといえる。これが他の地域に、あるいは他の官公需に飛び火することにでもなれば、たちまちカード被害は燎原の火のごとく広がり、あっという間に地場市場を焼き尽くす事態にもなりかねない。
大規模災害の発生に際して、緊急車両として地場SSに優先給油を求める自治体や消防・警察などの意向と、平常時に発券店値付けカードの採用によって、自らの燃料油の需要を地元とは無縁の業者に根こそぎ差し出してしまおうという行為とが、どう考えても同じ頭で発想したこととは思えない。しかし、これは紛れもない現実だ。
まずはこうした流れを押しとどめ押し戻すこと。そして、自治体や消防・警察などに対して地場SSの存在意義を改めてアピールすること。それが、直面する喫緊の課題だ。