2015.04.21 のニュース
需給適正化をためらうな
資源エネルギー庁はこのほど、2015年度から19年度までの今後5年間の石油製品需要見通しをまとめた。近年、軽・小型車、HVが自動車販売ランキングの上位を占めるなど、車のダウンサイジング化や低燃費化が急速に進んでおり、自動車の燃費改善を主因として、ガソリンは年平均1.8%の減少率で19年度には4831万㌔㍑と、93年度(4823万㌔㍑)以来の5千万㌔㍑割れの水準にまで減少すると予測した。今後5年間で8.9%減少し、471万㌔㍑もの需要が消失する。
灯油も、電気やガスへの燃料転換に加え、寒冷地の人口減少なども相まって年率4%の漸減を予測。特に17年度は10%への消費増税の反動で6.4%減の大幅な減少を見込む。19年度には14年度比18.3%減の1377万㌔㍑と、5年間で308万㌔㍑の需要が消失する。
一方軽油は、15年度は堅調な経済成長による貨物輸送が増加し、0.7%の微増を見込む。16年度以降は0~0.6%減で推移。19年度には14年度比0.1%減の3353万㌔㍑で推移するとした。
石油製品需要の長期的な漸減傾向が明らかになる中で、今後注目されるのは精製元売各社の生産・供給体制の変貌だ。昨年7月末のエネルギー供給構造高度化法の2次告示によって、国内の精製能力は最大で40万バレルの能力が削減され、17年3月末で355万バレルまで縮小する見通しとなっている。
14年3月末の1次告示対応では、処理能力の削減と製油所の定期修理が重なり、一時的に需給の適正化が進んだが、足元ではガソリンなどの需要減が顕在化しており、需給ギャップの拡大が危惧される状況となっている。
石油製品出荷額の50%以上を占めるガソリンの需給バランスが崩れた場合、収益悪化は避けられず、結果、元売各社は赤字を垂れ流すなど、経営への打撃は避けられないだろう。さらに需給バランスの崩壊はガソリンの乱売競争を誘発し、そのしわ寄せはすべて中小販売業者に降りかかり、廃業・撤退という最悪のシナリオに追い込まれる。
欧米のメジャーに比べて、売上高、利益率とも低く、ひ弱と言われる日本の石油精製元売。精製設備の廃棄・統廃合など選択と集中を大胆に進めていかなければ、国際競争には生き残っていけない。需給適正化をためらっている余裕はない。