日刊ニュース

2015.06.18 のニュース

不当廉売申告を減少させるな

5年前の2010年6月、公正取引委員会は09年度の独禁法違反事件の処理状況を発表した。それによると石油製品に関する不当廉売注意件数が956件と過去最多を記録した。これは前年度の430件の倍以上に達する多さである。この年の1月1日に施行された改正独占禁止法に期待して、全国各地で繰り広げられている廉売競争に終止符を打とうと多くの販売業者が申告を行ったことが影響している。
 改正独禁法は不当廉売や差別対価、優越的地位の濫用などの不公正取引に対し、何度「注意」が出ても全く効果がなく、一般に公表される「警告」は逆にその業者の安売りを宣伝している結果になっていることから、業界が罰則強化を要望して実現したものだ。石油販売業界をはじめ家電や酒販の小売業界は、この改正案の成立で「これで不公正取引に歯止めがかかる」と期待した。
 それから5年、石油販売業界からは膨大な数の不当廉売申告が出されたが、排除措置命令や課徴金が課されたケースはゼロ。「警告」は1件のみで、措置が講じられたのはほとんどが「注意」である。
 その「注意」の件数も、10年度以降は減少傾向となり14年度はついに400件を割り込んで326件に激減した。酒類の635件のおよそ半分だが、酒の「注意」件数も一時期1100件を上回っていたことをみれば、酒販業界の中でも独禁法への期待が低くなっている状況がわかる。
 最も激変しているのが家電製品の場合だ。09年に1425件の「注意」があったのに、2年後の11年には142件と10分の1に激減し、14年度はなんと3件のみである。
 この状況を見ると石油販売業界はもとよりほかの小売業界において「不当廉売で申告しても『注意』止まりではなんの効果もない」というあきらめや、不公正取引を禁止している独禁法そのものに疑問を抱くような事業者が増えているのである。
 どの小売業界も同じだろうが、仕入価格にマージンを乗せて小売価格が決まる。それが、ガソリンのような同じ品質の商品が系列特約店・販売店の仕入れ価格以下で販売されるような競争が「注意」どまりの処理をされているのである。公取委には、独禁法が小売事業者にとって公正競争を維持するための唯一の拠り所であり、期待していることも認識してほしいし、もっと切り込んだ判断を示してもらいたい。

提供元:全国石油商業組合連合会
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