日刊ニュース

2015.12.10 のニュース

“不当廉売”の真価問われる

“不当廉売”に再び関心が集まっている。愛知県常滑市でコストコSSと地元PBSSが一時、レギュラーガソリン90円割れの常軌を逸した廉売競争を発生させたことはあまりにも衝撃的だった。新設オープンで100円割れの廉売競争は期間限定だったため「クロ判定は難しい」と冷ややかな反応は多い。ただ、これだけの廉売行為はかつてないレベルだ。地元石商が迅速に不当廉売申告を幾度も重ねており、それだけでも切実な地元SSの声が聞こえてくるようだ。公取委の判断を注視したい。
 現在もコストコと地元PBは110円割れの競争を続ける。業転仕入れなら原価割れしない可能性もあるが、他地域のコストコSSの小売価格は113円以上で、十分な採算性がある水準ではないと推察される。目を転じると首都圏でも系列SSが110円割れの価格表示をしている。蔓延する廉売はPBSSばかりが起点でない。系列仕切りの不透明化に伴い大手系列SSほど事後調整確保のため「販売数量を落とせない」と焦る傾向にある。元売再編も足元はマイナス効果。一部にシェア維持・拡大に走る系列SS群の姿がある。
 カーケア重視のSSもいまや廉売要素を抱える。カーケアは本来、収益確保が目的だが、元売・商社が介在しシステム化されるにつれ、カーケア収益増にはSS来店顧客数の拡大が必須とされるようになった。ガソリンを廉売すれば来店顧客数が拡大するという歪なメカニズムができつつある。「安くすれば売れる。安くして集客したい」気持ちが採算販売という大切な規律を失わせる。
 各地で廉売行為を繰り返すのは異業種SSや大手業者がほとんど。巻き込まれ苦しむのは1SSで採算経営を行う地元中小SSである。こうした中小SSのために不当廉売の適用を機能させるべきではないのか。
 不当廉売は2010年に課徴金制度が導入されたが、対象となる排除措置命令は07年以来出ておらず沈黙だ。ただ、不当廉売申告が市場に刺激を与え、規律を回復させる効果を生む数少ない方策であることは間違いない。11月の全石連経営部会でも、エネ庁の佐合達矢石油流通課長が「公正取引実現の観点から、低迷する不当廉売申告を再度積極化することも必要」と述べている。もうすぐ年末商戦。「廉売」と疑念のわく小売価格には不当廉売申告を再稼働させ、果断なく行動していくことがいま重要ではないか。

提供元:全国石油商業組合連合会
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