日刊ニュース

2016.03.11 のニュース

“血の一滴”の誇り再び

2011年3月11日、東日本大震災発生。東北から北関東にかけての太平洋岸では、最大震度7に達する激しい揺れと波高20㍍超の巨大津波、そして原発事故によって、人々の生活が壊滅的な打撃を受けた。きょうで、震災発生から丸5年が経過したことになる。
 津波によって地上部分が根こそぎ破壊されたSS、漁業用A重油タンクの流失、製油所の火災等々、石油業界では設備面での直接的な被害が甚大だったが、そうした直接的・物理的な被災を免れ、あるいは被災からなんとか立ち直って営業を再開したSSが次に直面したのが、石油製品の供給不足という現実だった。
 広範囲で停電していたため多くが手回しで、緊急車両を中心とした給油に対応しようとしたSSは、製油所・油槽所の稼働停止や輸送ルートの寸断などによる石油製品の供給途絶と、ガソリンや灯油を求める一般ユーザーからの圧力との板ばさみという苦境に追い込まれることになる。東北から関東にかけて、被災地も含めたSSへのガソリンや灯油の安定供給が復活したのは、震災から1ヵ月以上が経過した後のことだ。それまでの間、自らも被災者だった多くのSSが、そうした不条理に悩まされ続けた。
 しかし、安定供給の復活とともにもうひとつ復活したものがある。東北の被災地を除き、各地で急速に再燃した安値乱売競争である。“血の一滴”だったはずのガソリンは、あっという間に客寄せの特売品に転落してしまう。しかもそれに合わせるように、災害時には緊急車両として優先給油を求めてくる警察、消防まで、平時には価格最優先とばかりに、競争入札によって地元ではなく地域外の安値量販業者を選択した。
 5年経ったいま、組織活動が実ってようやく、災害時だけでなく平時においても地元SSとの関係を重視する官公需適格組合の重要性が評価され、各地で具体的な成果も上がり始めている。しかし、SS市場は相変わらず混迷を極め、ガソリン市場が“血の一滴”の誇りを取り戻したとはとうてい言えそうにない。
 あの未曾有の大災害に直面して、SSは確かに、重要な社会的インフラとしての役割を果たすことができた。その役割を改めて自覚し、誇りを取り戻すことが、東日本大震災を振り返って、SS業界がいまなすべきことではないか。

提供元:全国石油商業組合連合会
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