日刊ニュース

2016.04.14 のニュース

「石油の力。」その厳しい現実

東京電力が2018年度中に石油火力発電所をすべて停止するという。他の電力会社の追随にも言及しており、電力は「脱石油」どころか、「石油ゼロ」へ踏み出す。
 環境制約の側面とともに、効率という側面でも、電力における石油は比較劣位に甘んじていることがその理由という。そもそも第二次石油危機を受け、石油火力の新設禁止が盛り込まれた「石炭利用拡大に関するIEA宣言」が採択され、以降の国内石油火力は、設備面ばかりか、技術面でも歩みを止めた。ピークの73年度には原油2360万㌔㍑とC重油3405万㌔㍑の計5765万㌔㍑の電力向け石油内需があったが、09年度には原油364万㌔㍑とC重油558万㌔㍑の計923万㌔㍑と6分の1まで減退した。ここに東日本大震災3・11が見舞った。
 計画停電が頻発し原発が全停止に陥った大混乱の中で、必要とされる電力を確保できた背景には、石油火力があった。12年度の石油火力向け内需は原油1350万㌔㍑、C重油1607万㌔㍑の計2954万㌔㍑と記録されているから、精製元売企業は、自らの製油所が被災・停止する片肺飛行の渦中にもかかわらず、ごく短期間で3倍を超える電力ニーズに対応したのだ。
 この教訓を踏まえ石油連盟は「緊急時のみの運用では国内サプライチェーンを維持できないため、石油火力の平時からの一定稼働が必要」と声明を発した。併せて、「石油火力は老朽化のため非効率であることから、地球温暖化対策の観点から石油火力のリプレースが必要」と技術革新を政策的に丸40年間もロックされた現状に警鐘も鳴らした。石油火力のリプレースのための政策支援を求めたメッセージだったが、いまだ実現していない。その最中に電力から、恩に仇をなすようなメッセージが発せられた。石油の宿命である連産性という得率制約を加味すると、精製設備能力に影響し、ガソリンや中間3品の生産計画にも影響を与える。
 ガソリンに対する次世代車やガス車両への支援、石油からの燃料転換を進めるガス体への支援。いずれも石油が大勢の原資を担う税制からの支援である。石油に重石を乗せたままで、代替エネルギーを軽量化させる政策が継続されていることとともに、3・11直後からの電力を支えた功績まで5年間で完全風化し、無視されようとしている厳しい現実を石油を担う一員として直視したい。

提供元:全国石油商業組合連合会
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