日刊ニュース

2010.11.29 のニュース

温暖化問題の国際交渉とSS業

環境省所管の国立環境研究所は、09年における世界の化石燃料由来CO2排出量が前年比1.3%減にとどまったと発表した。日本12%減、米国7%減となる一方、中国8%増、インド6%増、韓国1%増など、新興国のGDP増加に伴う排出地域の大幅なシフトを指摘している。世界CO2排出量のうち日本は4%に過ぎず、中国21%、米国20%、EU15ヵ国11%、インド5%。京都議定書では中印に削減額務はなく、米は議定書を離脱、EUには余裕も見え、日本の厳しさだけが際立っている。そもそも、議定書の削減義務を負わない国で排出量の7割を占める。
 こうした中、13年以降の目標となる「ポスト京都」の国際交渉・COP16がメキシコで始まる。昨年末のCOP15合意に基づき、日本は「全主要国による公平かつ実効性ある国際枠組みの構築と意欲的な目標の合意」を前提に90年比25%減の極めて高い目標を掲げた。中長期的な世界CO2排出量は新興国の伸長が続き、そのシェアは90年の35%が25年には52%と過半に達するとの試算もある。
 21世紀政策研が開いたシンポジウムでは、COP16の準備会合で先進国と途上国との溝が深まり、途上国は京都議定書の延長に傾斜、欧州は柔軟姿勢を示したとの見方がなされた。来国は京都議定書に我関せず。そこで、石油連盟など産業界9団体は一同に会し、京都議定書の延長に反対を表明。世界最高水準のエネルギー効率を一層追求し、省工ネ技術を世界に移転・普及させることで地球の低炭素化に貢献を図る決意を明示した。国内産業への過度な負担は、経済成長や雇用拡大を阻害する。
 一方、同研究所が試算した25%削減による地域経済影響分析によると、第2次産業が多い富山、愛知で可処分所得が世帯当たり67万円減る。光熱費・ガソリン代は富山、青森、山形で30万円以上増える。収入階層が低いほど、エネルギー関連支出が増す。マイナス影響をより多く受けるのは地方部である。エコライフの理想像を実現するには、相応のコスト負担がついてまわる。
 温暖化問題の国益争いは、つまるところ、市民生活に関わってくる。自身の暮らしをどう変えねばならず、どれだけの資金的投資が求められるのか。甘過ぎる試算はもういらない。温暖化問題の国際交渉はSSでの消費行動にいずれ影響することを踏まえ、その議論に注目したい。

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