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「死球が目立つ高校野球」 2007年04月17日更新

今年の春の選抜高校野球大会は初出場の静岡代表常葉菊川高校の優勝で終った。前評判はさほど高いものではなかったが、初戦で好投手を擁す仙台育英高校を2-1の接戦で制すと、次には怪物と言われる中田選手を軸にした優勝候補の大阪桐蔭高校にも2-1で勝ち波に乗ってほとんどの試合を1点ないし2点差の逆転勝ちで優勝したものである。その粘り強い試合運びと不屈の闘志は真に賞賛に値するものであった。

しかし一方でこの大会を見ていて疑問に思うところもあった。それは死球の多さである。ほとんど毎試合のように死球があったし、筆者が見ていただけでもヘルメットに当ったのが二回、顔面に当ったのが一回あった。プロ野球の場合首から上に当ったら危険投球としてその投手は退場処分となるが、高校野球ではエース一人が全試合を投げぬくのが普通のためかこの規定がないようだ。 最近の高校生の中には時速140kmを超すプロ並みの速球を投げる投手も少なくない。死球が多いのはいかにも危険である。初戦で20三振を奪った帝京高校の太田投手は、第二戦でいきなり右手の親指に死球を受け退場を余儀なくされ、以後の試合では登板できなくなった。さいわい骨には異常がなかったので彼の選手生命に影響することは無いと思うが、場合によっては一大事となっただろう。

気になったのは死球を与えたのが原因で試合に負けたある投手が、思い切って内角を攻めた結果なので後悔していないとインタビューに答えていたことだ。おそらく高校野球の指導者がそのように指導しているのだろうが、死球を与えた相手に対する思いやりが感じられないのは問題である。死球は場合によってはそれを受けた選手の人生を狂わせかねないものである。プロ野球ならまだしも高校野球は教育の現場である学校のクラブ活動の一環であるはずだし、ただ勝てばよいというものではない筈だ。もっと驚いたのは優勝表彰式において、高野連会長が各チームの積極的な内角攻めを賞賛していたことである。むしろ死球の多さに懸念を示すべきなのではないか。

死球に関しては、アメリカではストライクゾーンを外角に広く内角に狭く変えて投球を外側に誘導することにより死球を減らす対策をとっている。日本のプロ野球ではこうした具体策はまだとっていないようだが、高校野球を含めたアマチュア野球こそプロ野球に先んじてこのアメリカ方式を採用すべきではないか。とにかくやたらと死球の多い野球は見苦しいものである。せっかく去年の夏に斉藤・田中両投手の歴史に残る投げ合いが衰退する高校野球人気を回復させたというのに、このままでは間違いなく高校野球の人気は凋落すると感じる次第である。

(一本杉)

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