コラム

過去のコラム一覧へ

「軒並み大幅赤字の消費者金融」 2007年03月06日更新

大手消費者金融各社が軒並み今年度決算での巨額の赤字見通しを発表した。最大手の武富士では3,000億円を超える欠損となるという。その原因は利息制限法の上限金利を上回った契約に関して上限との差額を契約者に返還する必要があるからとのことだ。つまり消費者金融各社はこれほど大規模に不法な利益を収得していたのである。ではなぜそのようなことが可能だったのだろうか。

ここで登場するのが出資法で規制される上限金利である。出資法では上限金利を年29.2%と規制しており、これを超えての取引には罰則が適用される。しかし年20%を上限とする利息制限法には罰則規定がない。そこで殆んどの契約は利息制限法を無視して出資法の上限金利を僅かに下回るところでなされていたのである。これを一般にグレーゾーン金利と呼ぶ。

貸金業者の過酷な取立てが原因で家族の崩壊や自殺に追い込まれるなど社会問題化している現実をふまえて、政府は先の国会で貸金業法改正を通過させ12月20日に公布された。改正の中身は多岐にわたっており貸金業の正常化を図った内容となっているが中でも重要なのが出資法の上限金利を年20%に引き下げたことで、これによりグレーゾーン金利が無くなったことになる。これが消費者金融軒並みの赤字見通しにつながった。

しかしそれにしても消費者金融がこれほど大規模な会社になったのはなぜだろう。消費者金融といえば恰好が良いが要は高利貸ではないか。高利貸といえば昔は表通りに店を張ることはまずなく裏通りでひっそりと営業していたものだ。利用者が人目につくことを嫌ったからだ。ところが最近はどうだろう。テレビで毎日宣伝しているし、ゴルフトーナメントのスポンサーにもなっている。無人店舗なども増えて借りやすさで顧客を誘っている。そしてその会社の利益は不法金利であったりあこぎな取立てによるものであったりするとなると、こんなことで良いのかと思わざるをえない。

本来高利の借金などするべきではないし、借りたらそれが不幸につながるのが通常である。したがって高利の借金はし難いほうが良いのであって、簡便さを売り物にするのは間違っており社会正義に反するのではないか。また例え血に汚れた金でも金には違いないとばかりに宣伝を請け負うテレビなどのマスコミやスポンサーを依頼するゴルフトーナメントの主催者も、この社会正義に反するという感覚で対応してもらいたいものである。なんでも儲かれば良いというのではなく、儲けの質にこだわった経営をすることが社会の中でよい仕事をしていると評価されることにつながると思うのだが。

(一本杉)

ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE