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「秘密を守れない日本人」 2007年10月10日更新

米国が誇る世界最新鋭のハイテク駆逐艦であるイージス艦の詳細情報が流出するという事件があった。ある自衛官が持ち出した情報が、彼が付き合っている中国人女性を通じて流れたらしい。手口としてはかなり古典的であるがその情報は最新鋭であり、米国が神経を尖らせたとしても不思議ではない。なぜならこうした情報は米国では極秘事項であるのは当然だが、それが流出するようなことがないように万全の態勢で臨んでいるからである。それが日本の自衛隊から流出したとなれば米国内でいかに管理を厳重にしても無駄であるということになり、自衛隊の情報管理能力がいかにおそまつであるかを白日の下に曝したのみならず、今後米国からの軍事機密情報の提供はいっそう難しくなるだろう。もともと日本は情報管理がしっかりできないから重要な情報は渡せないというのが米国における常識であるが、今後はさらに厳しくなる筈だ。

情報管理がいいかげんなのは自衛隊のみならず、日本社会全体に見られる傾向である。役所や民間企業の内部情報が流出する事件はあとを絶たない。こうした情報の漏洩は場合によってはその組織にとって致命的ともなり得るものであるが、どうやら組織としての対応は甘いようである。なぜ日本では情報管理が厳重にできないのだろうか。平和ボケとか戦時中の過度の管理にたいする反発とかいろいろ考えられるが、どうもそれだけでは説明できない。性善説をよしとするのが一般的であるために性悪説に基いた情報管理にはためらいがあるのだろうか。たしかに性善説にたてば情報管理費は安くなる。しかし情報管理を徹底するのであれば性悪説を前提にしなければならない。

あれやこれや考えるに、農耕民族としての長い歴史が影響を与えているのではないかと思われるのである。集落を作って自分達の土地に定着している農耕民族は、秘密を持つことはタブーである筈だ。田植えや稲刈りやあるいは災害に見舞われた時などには集落をあげて助け合うことが必要だろう。そうした時に秘密を持つ人間が交じっていると、全員が力を合わせるための障害になりかねない。したがって集落の民は、自分は何も秘密は持っていません、自分は皆さんが知っているとおりの人間ですということを日頃から示しておく必要があった筈である。これが農耕民族としてのDNAとなって現代の日本人に受け継がれていると考えると合点がいくのである。だとするとたしかに秘密を厳重に守るということは日本人にとって慣れない仕事であり、やれといわれても中々上手くできないのが理解できる。

ではどうしたらよいのか。思い切って情報管理の仕事はアメリカ人やその他の狩猟民族のDNAを持っている人達に任せたらどうだろうか。狩猟は獲物を捕獲するために自分の存在を覚られないようにしなければならない。また獲物を捕り易い場所は他人に知られないようにする。つまり秘密を持つことは生きていくために当然のことなのである。こうしたDNAを持っている人達にとっては情報管理などは当然のことでありいとも簡単にできる筈だ。なにも日本人に不得手な仕事を押し付ける必要はないと思うのだが。

(一本杉)

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