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「さてこのあと何が起こるか」 2009年04月15日更新

アメリカのサブプライムローン破綻に始まった金融危機に関して100年に一度という表現が一般に使われているが本当にそうだろうか。むしろ史上初めてと表現すべきではないのか。なぜなら前回の恐慌のときにはITを媒介としたグローバライゼイションは存在しなかったが、今回はその存在が世界中を同時に不況に巻き込んでいるからである。このスピードは前回のときにはあり得なかったものだ。つまり前例のない事態なのである。であれば我々は過去の事例に習うことはできない。初めての事態に遭遇したのであるから、現状を正確に捉えてそこから今後起こるであろうことを予測する必要がある。

先般のNHKテレビのある番組で、今回の不況の回復はL字型かU字型かあるいはV字型かというアンケートを世界中の企業経営者に行ったところ日本では圧倒的にL字型という回答が多く欧米ではU字型とV字型が多数で特にアメリカではV字型と予測する向きが大半であったと報道されていた。これはなかなか興味深い結果である。日本の経営者がもっぱらL字型と答えたのはおそらく失われた10年と言われたバブル崩壊後の長期に亘った不況のイメージが強く残っているからだろう。なぜなら今回がL字型と判断する積極的な根拠が見当たらないからである。強いて言うなら何かと後手に回る政府に対する不信感か。

アメリカがV字型なのは、今回の危機の原因がはっきりしており政府が直ちに大規模な支援策に向かい世界主要国もこれに足並みを揃えていることから回復は早いと見ているからだろう。アメリカの景気後退は2007年11月に始まっていたとのアメリカ政府の発表が一年遅れで去年行われたが、このように発表が遅れたのはブッシュ政権が大統領選挙直前に悪いニュースを伝えたくないという思惑があったのではなかろうかと疑える。その真偽はともかくとして、もしこれが本当なら今回の景気後退はすでに始まってから約一年半経過していることになり、たしかにそろそろ反転の兆しが見えてきても不思議ではない。

今回の不況対策が世界同時的にしかも前例のない規模で行われていることを考えると、やはり落ちるのも早いが上がるのも早いとみるのが妥当ではないだろうか。むしろ心配しなくてはならないのはその後に来るかもしれないハイパーインフレーションのように思える。現在世界的に大規模な経済規模の縮小が行われている。これが極短時間の間に起きているため人々は地獄の淵を覗いたような気持ちになっているのだろう。しかし規模の縮小は生産財や在庫などすべて供給サイドで行われている。経済の動向を左右する需要サイドでは一時的な需要の減少が見られるにせよ世界の人口が減るわけではなくむしろ増え続けている。そしてその生産性は間違いなく向上している。よって住宅や電器・自動車などの潜在的需要は不変と見るべきだろう。とすれば早晩供給が需要を下回るときが来るに違いない。政府は今から来るべきインフレ対策をどうするか、よく考えておく必要があるのではないか。

(一本杉)

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