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「丑年にちなんで」 2009年01月20日更新

ちょっと遅くなりましたが あけましておめでとうございます。今年もよろしくお付き合いのほどをお願い申し上げます。

さて 今年は丑年ですが一般に丑年にはあまり良いイメージが無いようです。
しかしアメリカ発の金融危機が世界を飲み込んだすぐあとに丑年が来たことに筆者はなにかしら暗示的なものを感じるのです。牛は動きが活発ではなく常に草を食べておりそれ以外の姿を見たことがないのですが、実は人間にとってとても重要な家畜です。牛から採れる多量の牛乳は人間の赤ちゃんにとって必要不可欠となっており、またチーズやバターなどに姿を変えて欠かせない食材ともなっています。さらに加齢により牛乳があまり出なくなったら食肉として私達の胃袋に納まってくれるし皮は靴や鞄となって役立ってくれます。私達は牛には感謝してもしきれないくらいお世話になっているのです。

ここで話しが変りますが、アメリカの金融危機に始まりビッグ3に対する政府による資金援助などの一連の出来事の中からこれまでアメリカでは聞くことの無かった意見が目立つようになりました。ひとつは企業経営者の年収に関してです。アメリカの平均的サラリーマンの年収は大体3-4万ドルでしょう。一方大企業のトップの年収はこの100倍場合によっては1,000倍にもなっている現実はどう見ても異常としか思えないのですが、こうした指摘はこれまで目立つものではありませんでした。大量の失業者を突如社会に放り出したり巨額の資金援助を政府に依頼する経営者が依然として高禄を食んでいたのでは国民が納得しないのは当然で、すでに貰った分も返すべきとの意見も最近はアメリカで聞こえています。

つぎにはアメリカの企業経営の短期志向についてです。企業は株主のものであるというのがアメリカでの通念です。たしかに理論的にはそのとおりなのですが、株主の論理と企業の論理とは必ずしも一致しません。アメリカで最も成功した投資家と言われる大富豪のバフェット氏は株式には長期的視点から投資をしていると常に述べていますが、この発言には株主の論理と企業の論理とのバランスが感じられます。しかし最近は巨額の資金を運営する年金基金やファンドが短期的収益を望むため、企業経営者に短期的成果を要求するようになっています。最近の日本でも見られるように三ヶ月ごとに決算報告を求め、しかも右肩上がりでないと注文をつけるなど所詮企業経営者にとっては無理な注文と言えますが、基金やファンドの担当者も短期の評価を受けそれが収入に結びついているのでやむをえないのでしょう。つまりこうした投資家には本来株式投資は向いていないのですが他に巨額の資金を運用できる市場も見当たらないのでしかたないということでしょうか。そしてこれが企業の粉飾決算を招く要因にもなっているのです。かのエネルギー大手であったエンロンの破綻も粉飾決算からでした。

こうした短期志向にもようやく最近アメリカ国内で批判や反省の声が聞かれるようになりました。はたして金融危機を機会にアメリカが従来の狩猟型から農耕型に転換するのか。その一生を通じてスピードには欠けるが我々に様々な貢献をしてくれる牛のように、じっくりと着実に富を育てる世界経済になって欲しいと思うのですが。

(一本杉)

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