2010.08.05 のニュース
論説 タンク投資余力不足の背景
地下タンク規制の強化は、SSを自己所有している販売業者の大きな関心事であり、各県・各支部の会合では最重要課題との認識が相次いで示されている。他者所有では、今後の運営諾否に関わってくる。供給不安地域については、所定要件を満たせば地下タンクなどの入換工事やFRP内面ライニング施工工事・電気防食システム設置工事に対する一部補助制度が講じられているものの、対象範囲は限定的。そこで我々は、国が新たに決めた規制強化に対応すべく、FRPライニング・電気防食の施工や高精度油面
計の設置に対する支援策の創設、地下タンク入換補助金の対象地域拡大などを要望しており、各地でもこうした動きの広がりが期待される。
いま特に困惑しているのは、モータリゼーションの勃興期に開所したSSだ。40~50年が経過し、施設の老朽化も目に付くが、しっかりとメンテナンスを施している業者が多数存在する一方、補助制度などを活用してすでに漏洩防止策を講じた業者もいる。経過年数が長いから漏れるとも言い切れないし、比較的新しいから漏れないとも限らないが、リスク差はあろうし、自身の心配の大きさも違う。だが、リスクの存在自体は地域性を問わない。国のエネルギー政策に沿い、石油製品の安定供給を至上命題と位置付け、長い年月を積み重ねてきたSSほど窮地に陥りやすくなる。そして、このようなSSは地域社会に根差し、その一員でもある中小業者が運営しているケースが多い。
施設・設備の改修を自己資本で行うことができればそれに越したことはないが、大資本がセルフ化を強力に牽引し、中小SSへの卸価格と量販SSの売価が同水準、しかも同系列内という現実が目前にあるようでは勝負にもならないし、なりようがない。中小SSの経営努力は水泡に帰する。地域限定的な支援策だけでは足りないのである。石油産業の本格的な規制緩和当時、販売業者は競争環境の整備を同時実施するよう強く訴えたが、いまなお組合員数が大幅に減り続けている事実を見ると、努力不足の業者が自然淘汰されたというだけでは合点がいかない。今般の地下タンク規制強化は義務付けまで伴うものだから、しっかりと措置してほしい。また同時に、差別対価や不当廉売への対応がSS継続意欲を削ぎ、設備更新の決断を鈍らせてきたことも知ってほしい。