2012.04.03 のニュース
SSは年金問題に耐えられない
我々の雇用力が大きく損なわれた最大の原因は、丸14年前に遡るセルフSSの解禁である。給油業務に関わる人員減ばかりではない。専業者の領域だったSS事業のハードルが低くなり、改装してセルフ化する我々に対して、起業時から完全セルフ化できる参入者に優位性を付与した。その結果、異業種の併設SSの猛威の前に、我々は多くの仲間を失った。量販SSの位置付けが500KL、1千KLにかさ上げされ、より多くの既存SSが市場からの撤退を余儀なくされた。
我々の雇用力が急激に毀損されたのは、間違いなくこの国の政策変更が端緒である。
電力や都市ガスは、増税が議論される消費税も、この10月から「地球温暖化対策税」という別名で増税が決まっている石油石炭税についても、全額回収できる総括原価方式という単価設定の仕組みを有する。この中には、我々よりもはるかに高額な人件費ばかりか、社会保険全額が含まれる。平均で年450万円という東電の企業年金(3階建て部分)も、この総括原価方式によって組成された原資が元にある。
我々はこうした丸抱えによる仕細みの埓外で、多くはない収益の一部を削り、この制度を保持してきた。
石油内需が増え一方の社会状況下で、多くの人材を欲していた時期が我々にもあった。健保・厚年完備。大企業の特権だったこの語句を、中小企業が集うことで、我々も謳える。
この潮流に乗って、ほぼ全国をカバーする22の「石油」を冠した厚生年金基金ができた。現存する全国18の石油厚年は、加入員の減少、長期にわたる低利回りの運用環境など共通の問題に加え、AIJ問題で大きく傷ついた。
形のうえでは業界が設立を求め、行政から社会保険に精通する実務者を求めたものだが、国策として国が設立を推奨し、行政が人選した。これが真実のストーリーだ。設立後は運用幹事を中心にほぼ固定化されたシェア割で、国が認可した金融機関に運用を委ね、定期交代の行政出身者を事務トップに据えた経緯だ。
昨日の4月1日に18歳で入社した新入社員。彼が年金受給者となる頃の需給年齢は70歳というシナリオがある。実に52年後の話である。
制度を変えない理由などないだろうし、我々が政治的な救済を求めかくなる、自助努力の届かない世界に、年金問題がある。