2010.08.20 のニュース
時評 リスクを伴う大口の直売、入札 -週決めの仕切価格変動で赤字に-
週決めの仕切価格の変動に対しては、SSの店頭価格を改定することが定着している。だが、大口の中間留分、重油の直売、入札、掛売などの対応には販売業者も苦慮している。SSでのガソリン販売は、その都度、現金、カードで決済されるため問題はない。しかし、掛売となると、週単位の仕切価格の変動分を月単位で精算して請求、決済することになる。1ヶ月の仕切価格の変動分を精算することになり、煩雑な事務処理が必要になるのと、ユーザーに対して了解と説得が求められる。
大口の中間留分の直売となると、大勢は月決めの掛売となり、決済は1ヶ月以上遅れるのが商慣習となっている。大口取引きであるため、売上高も多額となるが、貸し倒れ損失、金利負担のリスクが伴う。最近の不況で企業の倒産も発生しており、貸し倒れの心配も多い。運送業などは、不況による貨物輸送の減少で経営難が伝えられている。
一方、大口ユーザーとなると納入業者が多く、共納関係、見積もり合わせもあり、価格交渉も厳しくなっている。仕切価格の設定にも元売間で若干の違いもあって、納入の時期、数量割引きなどの状況によっては有利、不利が発生する。長期契約となっているため、納入価格で大幅な価格差が生じることはなく、結局は安い価格の横並びで決着することになり、販売業考がかぶりとなる。
大口ユーザーの購買担当者も、販売業者の仕切価格は週決めで業転市況に連動していることを知っているため、価格交渉は一段と難しくなっている。仕切価格(業転市況)が透明で公平となり、手の内が分かるのことになったため、販売業者はますます不利となっている。これに販売業者が適正マージンを加算することになるが、仕切価格の水準が分かっているため、結局は、価格交渉でマージンが縮小されることになる。
一般入札となると、販売業者は足元の市況と仕切価格を参考にして入札価格を決めて応札する。落札しても、その後の仕切価格は毎週変動するため、落札価格との問に価格差が生じると損得が発生する。原油価格、為替の動きが流動的であるため予想は難しく、原油価格が急騰すれば大損となりリスクが伴うことになる。逆に原油価格が急落、仕切価格が下落すれば増益となるが、その場合はユーザーから値下げ要求が出て、値下げとなるのが通例であり、販売業者の立場は弱い。
入札に際して、大幅な価格の変動が生じた場合は、別途考慮することになるが、価格の予測を誤ると大損を蒙ることになる。とくに価格の変動が激しい灯油の入札は難しい。灯油相場も、過去のように夏場が安く、冬場が高くなるというパターンはなくなり、原油価格次第で、夏場が高く、冬場が安いケースもある。そのため灯油シーズン入り前の入札は難しくなっている。価格変動のリスクを考えて対応することになるが、納入期間中に急騰すると逆ザヤとなり赤字となる。08年の原油価格の乱高下で大損した経験もあり、大口の灯油の入札、直売には慎重さが求められる。しかし、灯油の商売となると、商機をいかに掴むかが賭けとなる。
大口の軽油も不況で貨物量が減少しており、運送業者が不況であり、厳しい状況にあり、倒産による貸し倒れが心配となっている。