日刊ニュース

2013.03.15 のニュース

メタンハイドレート産出に成功 国産資源の確保で追い風

資源エネルギー庁は12日、愛知県沖で実施していたメタンバイトレート(MH)から天然ガスを取り出す海洋産出試験に、初めて成功したと発表した。国の予算で実施されているもので、実施主体は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、オペレーターは石油資源開発が担い、探査船「ちきゅう」で作業を行なっている。産出されたガスに火が点いた映像が流されことで、石油資源開発の株価が225円、日本海洋掘削が1000円の値上がりになるなど、話題となっている。
 この産出試験のための掘削作業は昨年2月から実施され、7月にコアサンプルを採取、減圧によってMHを分解させ、天然ガスとして生産する実験を行なっていた。MHは、メタンと水が低温・高圧の状態で結晶化した物質で、わが国周辺海域に相当量の存在が確認されている。燃える氷として紹介され、埋蔵量は100年分に相当するとの説もあるが、海底に賦存するMHを、いかに、ガスとして大量に回収して商業ベースの価格で供給できるかが、今後の課題となっている。
 このMHの開発計画は2001年に策定され、フエーズ1では、2004年1月から東部南海トラフで試掘、賦存を確認、その後、2009年度からのフェーズ2では、産出技術の開発に着手している。商業化には、相当の時間がかかる夢のプロジェクトとされている。
かつて、国内外での石油・天然ガスの資源開発に関しては、1990年末の原油価格が20㌦/バーレルと低迷、原油、天然ガスの需給が緩和したこともあり、風当たりが強かった。1998年には、当時の石油公団の巨額な累積損失を抱え、経営体質問題も重なり批判が出た。その結果、2002年に石油公団廃止が決定、2004年2月に、受け皿としてJOGMECが発足、石油公団は2005年5月に廃止となった。
 石油開発に対しての支援策はJOGMECに移行したが、制度、業務作業の変更もあり、開発事業の推進は停滞した。この間、MHの開発、国の基礎試錐等は、国費の無駄使いと批判され中断されており、産油・ガス国との資源外交も軽視されるムードとなっていた。
 だが、一昨年の福島原発の事故後は、LNG、石油火力へとシフトするなかで、LNGの調達、天然ガスの開発が喫緊の課題となってきた。原油価格も100㌦を超えており、LNCの輸入増で貿易収支が赤字となるなど、日本経済への影響が懸念されるようになってきた。
 一方、北米では「シェールガス・シェールオイル革命」により非在来型の石油資源が開発ブームとなっていることから、安倍総理のアメリカ訪問でシェールガスの輸出を要請している。天然ガス(LNG)の調達に総理自ら乗り出すように、資源確保は国策として取り組む重要事項である。このような情勢下での、MHの開発にはフォローの風が吹いている。
 今回のMHの産出試験の成功によって、商業化に一歩近づいたことになり、また、わが国の国産エネルギー埋蔵量が増加することとなる。現在、国産の石油、ガスの国内消費に占める比率は1・5%と低いが、将来的には大量の天然ガスの生産が期待される。だが、商業化には数十年かかるとの見方もあり、さらなる技術開発が望まれる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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