2010.09.28 のニュース
SS運営継続への思いと意識
老朽地下タンクの規制強化は、石油販売業者の生き方を大きく左右する。地域社会に根差し、古くからその一員であり続けてきた中小零細業者にとっては、なおさらだ。そんなSSはエネルギー供給拠点であり、クルマが集まる井戸端会議場さながらのスペース提供と情報の集積・発信地点であり、地域コミュニティの一翼を担ってきた。ユーザーにとっても、贔屓のSSが閉鎖せざるをえなくなったと聞き、仕方なく、どこに代替すればいいかを相談したり、他のSSを探したという話も少なくない。慣れ親しんだSSが消えることは、ユーザーにとっても他人事ならぬ。“自分事”だ。
「まさに死活問題」と危機意識を訴えるSSの増加は、地域社会の雇用問題にも波及する。一大工場が閉鎖・移転するわけではないから大騒ぎにはならないが、地場で業を興し、地場の人材を採用して育て、地場に利益を還元してきた販売業者ほど、窮地に立たされる可能性が高い。
全石連が試算した地下タンク規制強化への対策費用は、1SS平均でFRPライニング520万円、電気防食380万円、高精度油面計の設置に200万円程度。
では、これを負担する必要性が生じるSSの経営実態はどうか。地下タンク対応不可能=SS業撤退につながる1SSディーラーを石油協会調査からピックアップしてみると、年間売上高3億円に対し、経常利益は100万円。しかも、営業利溢ベースでは若干赤字だ。規制緩和後の過当競争に巻き込まれてきた中小零細業者にとっては、時間的にも金銭的にも余裕がない。
「地下タンク問題への対応は最優先課題」との声が日増しに広がり、全石連、油政連、各地の組合は来年度概算要求に盛り込まれた補助制度の実現に向けた要望運動を活発化し始めている。全石連アンケートによると、補助が認められた場合、FRP施工などを実施して「SS業を継続する」意向が4月時点より大幅に増えていることがわかった。厳しい商環境が続く中でも、なんとかSSを続けたい、との思いが伝わってくる。そのSSを、きょうも利用しているユーザーがいる。灯油シーズンに向けて、配達注文のタイミングがいつごろになるかを考え始めたユーザーもいる。サプライチェーン最前線の出番を待つ地下タンクは、やはり、大切な社会インフラだ。