2010.11.19 のニュース
ユーザー転嫁直前で原油急落 ―販売業者、様子待ちか対応に苦慮―
原油価格は大幅な変動をみせているため販売業者の対応が難しくなっている。先週はWTIが87ドル/バーレル台、中東産が85ドルで推移していたが、12日のWTIは84ドル台、16日のWTIは82.30ドルと、前日比で2.5ドル下落している。先週に比べると約5ドルの急落となっている。
仕切価格は13日からガソリンで1円の値上げが実施された直後であり、販売業者はユーザー転嫁の準備に入っていたが、原油価格が大幅な下落をみせているため様子待ちとなりそうである。仕切価格の改定で、指標となる業転市況は直近の価格を対象としており、原油価格の変動が敏感に反映することになった。価格の変動は、直ちに東工取の先物市況に連動、その後、業転市況に影響することになる。数日のタイムラグがあるが、業転市況も値下がりする。
仕切価格は業転市況のローリー価格に連動することになっている。だが、業転市況は原油価格のみでなく、国内の需給、海外の市況によって変動するため、その状況によって違った動きをするが、最近は原油価格にほぼ連動している。
一方、販売業者やユーザーも、新しい仕切価格が定府したことで、原油価格に敏感に反応する状況となってきた。結果的には、原油価格、業転市況の直近の数値を反映させることになり、仕切価格の改定はタイムラグを短縮させることになった。メリットとしては、コストの変動を直ちに仕切価格に反映させること狙ったものであるが、数日間で原油価格が変動すると、販売業者は、どうしてもユーザー転嫁の対応が遅れるため、コスト増はかぶりとなる。
5月以降は仕切価格も値下がりが続き、ガソリンの末端市況は下落した。10月に入って仕切価格は値上がりに転じたが、1円強の値上がりとなっため、末端市況は下げ止りで経過、11月で原油価格が値上がりしてユーザー転嫁を準備していた直前で原油価格が大幅下落となったため、様子を見ることになりそうである。
新・新体系に移行して初めての値上げ局面であっただけに販売業者の取り組みが注目されていたもの。ここに来て原油価格が下落したことから、出鼻をくじかれた感じである。今後も値下がりするとなるとユーザー転嫁は仕切り直しとなる。
元売も原油価格が値上がりした場合は、業転市況を値上げすることになり、そのためには需給を締めることが第一として取り組んでいる。そのためには、常に需要に見合った生産で対応しており、供給増を避けるため輸出増で対応し、最近は需給バランスが保たれている。
08年10月から、業転市況リンクの週決めという新体系の仕切価格を実施したが、供給過剰による元売間の競争が展開されて業転市況が低迷、本業の石油事業は赤字が続いた。この赤字の解消を狙って、ブランド料の引き上げを織り組んだ新・新体系を導入することで起死回生を図った。その効果もあってか、上期決算は増益の黒字となった。新・新体系の導入でマージン確保が達成され、増益の要因となったが、基調としては、各社の需給調整で業転市況がマージンの確保できる水準で維持できたことが大きな要因としてあげられる。元売サイドもJX日鉱日石エネルギーの発足で大手5社体制となり、シェア競争は沈静化してきた。