日刊ニュース

2010.12.27 のニュース

エネ研見通し 平年の原油価格は85ドル ―石油需要増、先物市場への資金流入などを想定―

日本エネルギー経済研究所は、2011年の原油価格の見通しを発表した。WTIで「基準ケース」の場合は年平均85ドル/バーレル前後(±10ドル)と予測している。さらに「高価格ケース」は95ドル前後、「低価格ケース」は75ドル前後と、3通りのシナリオを示している。エネ研では毎年年末に来年の見通しを発表しているもので、事業を推進するための指標として関心をあつめている。
 足元のWTIは88ドル台で推移しており90ドル台乗せも予想されている。
2010年の平均値は79.2ドル(12月17日時点)となった。ちなみにエネ研の見通しでは、基準ケースでは70ドル前後と予測しており、これに比べると大幅な値上がりとなっている。10年の原油価格の動向をみると、最高値は89.4ドル、安値は68ドルとなった。大半の期間は68ドルから80ドル台前半までの範囲内での「ボックス圏相場」で推移したことになる。石油業界でも、最近では「70ドルから80ドルの価格帯で推移する」と予想している。12月以降は88ドル台で推移しており、7日には取引中で一時は90ドルを突破しており、ブレントは、ヨーロッパでの寒波を反映して90ドル台にのせており、WTIを上回っている。世界の石油需要は前年比で247万バーレル/日増加となり、過去10年で2番目となる大幅な増加を示し、過去のピークであった07年の需要を上回るのは必至である。依然として中国などの新興国の需要増加が目立っている。
 最近の原油価格高騰の要因は、世界の金融・経済情勢の影響、原油先物市況への資金の流入、アメリカを中心とした金融の量的緩和策による流動性相場の形成、新興国の経済発展、冬場を迎える北半球の需要増加などの点があげられている。また、市場プレーヤーが、高値を容認する市場意識の浮上が影響している。
 エネ研による2011年の「基準ケース」では85ドルとしているが、その前提としては①世界経済は新興国に牽引され4%増の成長を維持する、②アメリカの金融緩和の下で、先物相場にも資金が流入する、③世界の石油需要は前年比で140万バーレル/日の増加となる、④非OPECの原油生産は60万バーレル/日が増産となる。その場合、OPEC原油への需要は20万バーレル/日となるが、需要は締まる方向に向う、などの点があげられ需給は緩やかに引き締まるとみている。短期的には90ドル台の後半から、さらに上値を目指す展開もあるとみている。
 クォーター別では第1四半期は85ドル、第2四半期は87.5ドル、第3四半期は85ドル、第4四半期は82.5ドルと見込んでおり、後半で値下がりするが、年平均は85ドル前後となる。しかし、過度の高価格と低価格に対する市場関係者の警戒感が存在し続けることから、引続き一定の上限・下限の存在の中で変動となる可能性は高いとしている。
 さらに「高価格ケース」では95ドル前後としているが、その場合は先進国も景気が回復、石油需要は増加、先物市場への資金流入が拡大、需給ではタイト感が強まると予測している。「低価格ケース」の75ドル前後は、世界の景気が後退、2番底懸念が高まる、世界の石油需要の増加が止まる、イラクの生産拡大が進む、その結果、需給が緩和して原油価格は下落する。下落した場合も、OPECが減産で下支えの役割を果たすとみている。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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