2011.04.08 のニュース
供給正常化 災害対策は再検討 ―便乗値上げなし 価格問題理解得る―
東日本大地震が発生からまもなく1ヵ月を迎えるが、被災地である東北地方の元売系列のSSは89%が稼動しており、正常化の方向となってきた。まだ被災地の最先端での混乱は残っているが、仮設のミニSSの増設などで対応しており、陸前高田市では5か所で給油を開始するなど、平常化に向けて復旧作業が進んでいる。関東地区でのSSの営業はすでに正常化しており、残る東北地区も元売系列のSSが約90%回復したことで来週中には安定供給の目安がつきそうである。
今のところ被災地の供給を優先しているが、ある程度の落ち着きをみたのを機に、石油の安定供給、災害対策の再検討が行なわれることになる。今回の大地震は、経験したことのない想定外のものであり、地震直後の大津波発生もあり、地震に強い石油産業というイメージが崩れる結果となった。
製油所、油槽所、SSは、地震に耐えても津波には耐えることができず、製油所は冠水、SS・ローリーは津波で流されることになり、大きな被害が出た。製油所の火災も発生した。石油製品の供給は、関東、東北で一時は6製油所が操業を停止(140万バーレル/日)した。その後、東燃・川崎、極東・千葉が再開、21日からJX・根岸が操業を再開したことで、首都圏の供給体制確保の目安がついた。SSへのガソリン等の供給も、大手のJX系のSSが立ち上がったことで関東地区の混乱が回避されてきた。まだ3製油所は操業を停止している。
この間、首都圏のSSではガソリン、軽油の不足が深刻化、ユーザーがSSに殺到して長い行列ができて大混乱となった。SSサイドでも、営業したいがユーザーが殺到して混乱するため休業としたところもある。運送業者からみればガソリンが不足することは死活問題であり、供給確保に苦慮した。人工透析などの病人、急病人の通院に車を利用することができず、ユーザーからも安定供給を求める声が出た。
ユーザーの買いだめも批判されるが、石油業界としても緊急時に対する供給体制のあり方の再検討が求められる。混乱時に安定供給を求めることは難しいが、緊急車両への供給を第一に優先し、その他の車に対しても優先順位を設けるなどの対応が求められる。
販売価格について、一部では便乗値上げという声も出たが、価格をめぐっての問題は提起されていない。
原油価格が地震発生前の2月末に急騰したため仕切価格は大幅な値上げとなり、ユーザー転嫁の時期と重なったためといえる。
中東産が急騰して2月末は110ドル/バーレルとなり、仕切価格は3月分でみるとJX、出光などでガソリンが9円60銭/Lの値上げとなっている。毎週の改定を日数加重平均で算出したものである。最近の仕切価格の改定をJXでみると、2月19日から1円50銭、同26日から3円50銭、3月5日から4円90銭、12日から1円90銭と連続値上がりで、この間を単純に加算すると11円80銭の大幅値上げとなる。
末端市況は石油情報センターの調査では2月末の139円から足元は152円へと13円の値上がりで150円相場となっており、仕切価格の値上がりの範囲に留まっている。