日刊ニュース

2011.04.15 のニュース

今後はガソリン供給増が心配 ―石油火力シフトで電力用C重油を増産―

福島原発の事故で石油火力にシフトすることになり、電力用C重油が増産となる。そのため、今後、ガソリン、中間留分が供給増となり、市況下落が心配されている。石油製品は連産品であり、C重油を増産するため原油処理増で対応すると他の御品も増産となる。
 東電の原発事故としては07年7月に発生した柏崎刈羽原発(現在も一部停止)を経験しているが、今回の事故は規模が桁外れであり、12日には原子力・保安院が評価尺度をレベル7と最高値に引き上げ、チェルノブイリ事故と同水準と発表した。そのため復旧までには長期間がかかるのと、原子力推進政策の見直しは必至である。今後、石油火力が復活するのかも注目されるところである。
 現在の電源構成をみると原子力は約30%であるが、石油は8%と低い。電力が不足した時にC重油が消費されており、石油業界からは「困った時の石油頼みではなく、平常時から石油のシェアを確保すべきである。緊急時に限って供給増を要請されても対応が難しい」と反論してきた。
 現在も石油の消費抑制から新規の石油火力は認められていないため、当面は休止している設備を稼動させることになる。とは言つても、石油業界は電力不足をカバーするためC重油を供給する努力をすることになる。C重油を増産すると、供給増となるガソリン、中間留分をどう解消するかが問題となる。対応策としては、①重油分の多い原油を処理する生産パターンに変更する、②余剰となるガソリン、中間留分を輪出する、③南方地域からLSC重油を輸入する、などの方策が予想される。
 現在は地震の影響で東北地区は供給不足であるため、各製油所はフル生産中であり、需給はバランスしている。しかし、C重油が増産となれば、今後はガソリンなどが供給増となる。ガソリンの場合は、輸出が難しいため対応に苦慮する。各国のガソリンは性状が違い、日本製のガソリンをそのまま消費できない。そのためガソリンは基材としての輸出となり、その量は少量である。
 そのため国内消費が重点となるが、震災の影響でレジャーの自粛が予想され、不況を見込んで個人消費も落ち込むことになり、これからの連休商戦も厳しい見通しとなっている。今年のガソリン販売は微増が続いていたが、マイナスに転じることも心配される。今年は連休商戦に増販が期待されているだけに、予想が外れると市況にも影響する。
 中間留分は不需要期にあるが、震災地での復旧、復興作業によりトラック、重機などの稼動で軽油需要が増加しており、工場では自家発電の稼動で軽油、A重油の販売が増加している。震災特需が発生しており、中間留分の販売は堅調で推移しそうである。輸出も軽油、ジェット燃料は見込まれる。現在は東北地区の供給を優先するため輸出は停止しているが、今後は、輸出が再開となり、増加する可能性もある。
 一方、C重油の値決めは東電との交渉でコスト積み上げ方式を採用している。石油業界としてもコストは確保でき、マージンが見込まれるため取引きとしては成り立つ。だが、C重油の増産でガソリンなど供給増となり、市況が下落することになれば、石油業界としては、そのマイナス分をかぶることになり、リスクを伴う。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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