2010.07.16 のニュース
エネ研 後半の原油は75ドルと見込む ―メキシコ湾の事故、中国の需要動向を注目―
日本エネルギー経済研究所が最近の原油価格の展望を発表した。2010年上半期(1~6月)のWTIの平均は78.5/バーレル(最高値が86.8ドル最低値が68ドル)となったが、年後半にかけては「75ドル前後が変動の中心水準になる」との見通しを発表した。エネ研は毎年年末に翌年1年間の原油価格の見通しを発表しており、今年は基準ケースでWTIを70ドル(+-10ドル)としていたが、中間(7月)で見直しを行なったもの。基本的には、基準ケースをそのまま妥当とみるが、後半は75ドルで推移すると見直したもの。
その要因としてはアメリカのメキシコ湾の原油流出事故の成り行き、中国の石油需要動向をあげている。今年上半期は68~87ドルの範囲に入る価格帯で推移しており「ボックス圏相場」が形成されている。今後も市場認識・期待の状況に大きな変化を想定しなければ、この水準で推移すると、見通している。
天坊石油連盟会長も「原油価格は70~80ドルの価格帯の範囲内で推移している」と述べている。
原油価格は、石油の需給ではなく、世界経済・金融情勢、原油先物市場への資金流出入、株価、地政学的なリスクなどが複雑に絡み合って形成されている。とくに投機資金の動向で大きく影響を受けるため見通し難となっている。また、不確実性、不透明な要因としては世界の金融情勢が挙げられ、ギリシャの財政危機に端を発した信用不安が欧州経済、世界経済に大きな影響を与えることも懸念される。
一方、産油国は生産余力もあり、OPECも生産枠を超えて増産で対応しており供給増となっている。
しかし、メキシコ湾の原油流出事故の影響で世界的にも深海での石油開発にブレーキがかかることも予想され、その結果、IEAでは世界で2015年までには90万バーレル/日の減産になるとの報告を出している。深海での開発による増産で供給増を見込んでいただけに市場心理を含めて先行きの原油価格の動向が注目される。今のところメキシコ湾の事故を契機に原油価格は値上がりしていない。だが、この事故による供給での懸念材料が出てくると原油価格は80~90ドル台で推移すると見ている。
この事故の修復には8月までかかるとされており、原油回収の費用、環境被害に対して膨大な補償賛がかかるが、事故を機に安全系準の改定、鉱区入札の停止などが検討されている。さらに、開発に際しての安全県準の強化によるコストの増加、操業リスクの増大、アクセスの低下などで石油開発の遅れ、生産量の低下につながると原油価格は値上がりする。補償問題でオペレーターであるBPの経営への影響もさることながら世界全体の石油開発業界にも大きく影饗を及ぼすため今後の成り行きが注目される。
さらに、今後の原油価格に大きな影響を与えるのは中国の経済である。09年の経済成長率は9.1%であり、10年の1~3月は11.9%となっている。中国の石油需要は軽油のシェアが40%、ガソリンは20%弱となっており、経済成長と密接な関係を持つ。10年も10%程度の経済成長を達成すると石油需要は6・8%増、50~60万バーレル/日の増となる。逆に経済が減速すれば石油需要は減少する。