2010.07.26 のニュース
論説「新・新」の危険な症状
6月の前半、国内石油製品市場において奇妙な現象が発生した。そこが発する相場が、SSの経営に大きな影響を与える卸価格を左右し、さらにSSを通じて日本の石油小売価格のベースとなるのが実態だから、静観してはおられない。
6月の22営業日中の13日間、国内のガソリン陸上現物相場は不動で推移した。この間に、東京先物・最期近は2.8円幅で、京浜海上現物も1.8円幅で、いずれも毎日、価格変動が生じた。為替は1ドル91~93円と最大2円幅。これはリットル換算では1円の変動要因につながる。中東産原油指標はバレル71~76ドルの間で推移し、2.9円の変動要因が発生した。為替と原油の変動要因の最大高低差は3.2円となる。
実は、ガソリンの陸上現物相場が1週間に相当する5営業日間不動、というのも頻発しており、09年9月にも10日間、相場が完全に不動のロック状態となったことがあった。時々刻々と相場が動く原油、動く為替、動く金利といった変動相場の塊をペースとするはずの石油製品相場とすれば、どこかに構造的な欠陥があるように見える。
「より高く売りたい」という不特定多数の売り手。「よりやすく買いたい」という買い手。それぞれの希望価格を集約し、折り合うことが市場の価格発見機能、市場メカニズムであるのなら、新仕切りが導入された08年10月以降の国内ガソリン現物市場は、明らかに異質な市場へと変容している。最近、標準となった「新・新」システムの元では、その症状がさらに先鋭化していることが懸念されてならない。
好むと好まざるとに関わらず、現物市場への価格変動は、外資系元売の外販価格が、ほぼ唯一のシグナルとなってしまっている。不特定多数で構成されているはずの売り手が、ほぼ無抵抗でこのシグナルを享受するのも不可思議だが、13日間の相場ロックは、外資系が前週比で同値据え置きのシグナルを発し続けたからに他ならない。
この異質かつな不可思議な市場が、残念ながら、SSの卸価格の標準を成してしまっている。SS卸価格を通じて、系列SS、プライベートSSを問わずに現実の小売市況を形成し、日本のガソリン消費者物価を上下動させてしまっている。
昨日まで10営業日連続でガソリン現物陸上相場は、外資の声を待って、またしてもほぼ横はいが続く。