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「少子化は合理的」 2005年04月12日更新

出生率が全国平均で1.29となり 東京では1を割り込んだという。 現状の人口をそのまま保つには出生率は最低でも2が必要であり このままではえらい事になると政府が騒いでいる。えらい事とはなにかといえば ピラミッド形の人口構成を前提に出来上がっている保険や年金の制度が 立ち行かなくなることらしい。厚生労働省は一時的現象と捉えていると呑気なことを云っているらしいがこれほど傲慢且つ無責任な役人根性丸出しの発言はない。なぜなら 一時的と捉える論理的根拠を全く示していないからだ。もっとも論理的根拠などあるはずがないのだが。

政府はもう少し真面目なようで 経済界と協力して育児休業制度の拡充とか 保育施設の拡大など子育て支援の策を検討しているようだ。しかし 本当にこれにより子供の数が増えるのだろうか。

現実には必ずそれを支える合理性がある。少子化という現実も例外ではない。 
それでは少子化を支える合理性とは何であろう。思いつくままに列記してみると1)昔と違って現在は乳幼児の死亡率が大幅に低下しているので 産んだ子が死亡する心配をしなくてよいから 子供の数は少なくてもよい。2)平和な時代が60年も続き子供が戦死する恐れがないので 子供の数を増やす必要がない。 3)男女共に初婚年齢が高くなり これにより初産年齢も上っているために 年齢の問題から二人目あるいは三人目の子供を生むことを躊躇する。 4)結婚と同時に家を離れて生活を始めるのが一般化しているが この場合マンション住まいが多く手狭であるため複数の子供を育てるのが難しい。 5)幼児教育から大学卒業まで教育費がかなりの負担となるため 複数の子供を賄えない。 6)女性の社会的地位の向上により働く女性が増えているが これらの中には結婚しない人もかなりいる。 そして彼女たちの殆どは子供を持たない。 

もっとあるだろうが ざっと考えても上記のように子供が少なくなる理由が挙げられる。こうした理由が 少子化を支える合理性である。 小子化を変えようとするならその合理性を壊さなくてはならないのだが 政府の対策は殆どその役にはたっていない。 では役にたつ対策はあるのかと聞かれれば 筆者も残念ながら思いつかない。今の現実は真にあるべくしてあるものなのだ。 だからむしろ少子化をそのまま受け入れた方がよいのではなかろうか。 それでは困ることが沢山あると云われるかも知れないが それが世の中と割り切って 年金や保険などの困る方を変えていくのである。
そもそも 数十年前には日本は狭い国土に人口が多すぎ このため地価は上がり住宅は狭くなり 満員すし詰めの電車で通勤するなど人間らしい生活ができないと皆不満を述べていたではないか。その頃から見れば 少子化の現代ははるかに人間らしい生活ができているはずだし これから更にそうなると云えるのではないか。そこで 日本ではどの程度の人口が最も望ましいのかを大々的に検討したらどうだろう。例えば 英国は日本とほぼ同じ国土面積を持っているが平地面積が全体の8割であるのに対し日本の平地面積は2割である。英国の人口は日本の約半分であるから 人口当たりの面積は日本の8倍に相当する。どう見ても日本の人口は多すぎるようである。やはり日本は日本としての人口政策を持つべきであろう。そのうえで日本として一定の相応しい人口を以って どのような生き方をすることができるかを検討すべきではなかろうか。

こうした考え方を進めて行くと既存の制度は成り立たなくなるであろう。しかしこれは既存の制度が合理性を失ったということであり これを改めるのになんら躊躇することはないと思うのだが。

(一本杉)

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