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「再び原油価格について」 2004年12月29日更新

一時バーレル当たり50ドル台半ばまで高騰したWTI原油価格も さすがにその後下落に転じ 42ドル台にまで下げて 現在は40ドル台半ばで推移している。しかし これでも以前と較べれば まだ格段の高値といえる。

ところが OPECは原油価格の下落を嫌ってか 一日当たり100万バーレルの減産 を決めたと報道された。 但し これは加盟国の割当量を上回って生産されている分を減産するものであるという。つまり 協定破りが大々的に行われていることをOPEC自らが公式に認めたものであり まさに語るに落ちるとはこのことか。 

それにしても協定破りの分の減産を決めて発表するとは 一体どういう神経なのだろう。 決めたことを破って生産が行われているのだから その減産を決めたところでこれが守られる保証はまったくないことになる。 しかも この100万バーレルは協定破り分の一部だというのだから 何をか言わんやである。 はっきりしているのはOPECなどはてんから信用できないということだ。 

ニューヨークのウオール街のトレーダーもその点は百も承知であるから この報道が流れた日にも 原油価格は全く上昇気配を見せなかったのである。

これに続いて つい先週のことだが 今度は例のビン・ラデインが湾岸諸国の石油
生産設備を攻撃すると声明を発表した。 この対象にはイラクやサウジアラビアも含まれると言う。 この内容は OPEC決議とは比較にならないほどに迫力を持っている。 もしこれが現実となり サウジの原油生産が止まるようなことになれば原油価格は際限の無い上昇をたどるだろう。 したがって この報道が流れた日には原油価格は2-3ドルの上昇を見せたのだ。

しかし どうも腑に落ちないものを感じるのだ。 なぜ原油価格が10ドル以上も値下がりしたこの時機にビン・ラデインが声明を出したのかである。 ここからは筆者の勝手な憶測であり なんらこれを裏づける証拠があるわけではない。 だから間違っているかもしれない。 けれど 当たっているかもしれない。

もしビン・ラデインが大量の先物原油を買い持ちしていたとしたらどうだろう。
今回の下落で帳簿上では巨額の損失を蒙っている筈である。 しかも 今の雰囲気からすれば 近い将来原油価格の急激な持ち直しは期待できそうにない。 テロを続けるには相当の資金が必要であり 先物での損失は何としてでも避けねばならない。そして 原油価格を大幅に押し上げるためのもっとも効果的な策は 産油設備を攻撃することであり その最大のものはサウジにある。 だが 当然のことながら産油設備は厳重に守られており よほど周到な準備をしてからでないと これを攻撃して成功することは難しい。 そこで とりあえず声明を発表したと考えるとすべて辻褄が合ってくるのだ。

アメリカ政府なら 先物原油の買い持ち先の調査はできるだろうから あるいは既に調べが付いているのかもしれない。 そして筆者の憶測が正しいとすれば アメリカはビン・ラデインの首を絞めにかかるだろうから この場合原油価格は逆に下方へ向うことになろう。 さて どうなるか。

今回が今年最後のコラムとなります。 一年間退屈なコラムにお付き合い頂き真にありがとうございました。 引き続き来年もできるだけ読者の皆様に喜んで頂けるようなコラムを掲載したいと思っておりますので なにとぞよろしくお付き合いのほどをお願い申し上げます。 では どうか良いお年を。

(一本杉)

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