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「安易な右傾化を危惧」 2006年02月17日更新

最近社会全体が右傾化しつつあるように思えてならない。小泉首相は中国や韓国の非難も馬耳東風で、靖国参拝を控えようとはしない。これは個人の心情の問題で、非難する外国の方がおかしいと言う。そのとおりなのだが、外交がらみとなると、ことはそれほど単純ではない。 

敗戦により焼け野原になった日本が、それから60年を経て世界第二位の経済大国となり、戦勝国であるはずの中国や韓国は大きく遅れをとっている。同じアジア人で個人としては決して日本人に劣っているとは思えないのに、この大きな差は何故だろうと彼等が考えても不思議ではない。そして多くの人々がこれは政治の差ではないかと思った時に、体制が大きく揺らぐことになりかねない。そこで何とかして日本を悪者に仕立て上げたいと、政治家は考えるだろう。しかし中々恰好の材料が見つからない状況下、靖国問題は彼らにとって救いといえるのではないか。靖国問題・歴史認識問題を除くと、彼らとして日本に咬みつく材料が殆んど見当たらないはずである。 

つまり小泉首相は自ら中国や韓国に日本批判の材料を与えていることになるが、本来平和を国是とする日本としては外交的に摩擦の材料となるものは自ら取り除くべきであろう。それが平和の維持に役立つと思えるからである。
ところがそうすると今度は相手国が日本に対して使える貴重なカードが一枚減って残るは歴史認識問題だけとなるが、これだけでは心許ない。 つまり相手国としては靖国参拝を続けてもらった方が内政面を仕切り易いことになる。皮肉な話しだが小泉首相は靖国参拝を続けることにより、相手国の政権を支援していることになる。

このように現時点ではお互いに微妙なバランスをとっていることになるが、中国や韓国が二枚のカードを使って対日批判を行うたびに、日本の中で反中・反韓感情が高まっているように思える。これが将来危険な状況を招くことになりかねないと危惧するのである。 

小泉政権はこうした国民感情の高まりを利用して憲法改正を目論んでいる。自衛隊を軍隊として認知し、集団的自衛権を認めて海外で戦争ができるようにしたいようだ。自衛隊の認知はともかく、集団的自衛権は重大な意味を持つ。これは平和憲法の基本をないがしろにするものであり、軍国主義化を推進することになりかねない。そしてそのコストも莫大なものとなろう。現在日本の防衛費はGNPの1%程度に抑えられているが、海外で戦争をするとなればその費用は桁違いに膨らむはずだ。 政府はこの費用に関しては一切口をつぐんで触れていないが、やはり憲法を改正するのであれば費用負担に関しても国民の了承を求めるべきであろう。防衛庁を防衛省に格上げするとも云っているが、これも軍事国家にするための準備である。

さらに憂慮するのは、民主党の前原党首までが集団的自衛権を容認していることである。こうなると国民は反対するための手段を失うことになる。これは最大野党としての責任感の欠如であり、もし民主党が本当にその方が日本のためになると考えているのであれば、与党以上に国民に対する説明責任を果たすべきだろう。戦争を知らない世代が大半となっている現在、戦争を知っている世代には再び戦争の悲劇を繰り返すことのないよう訴え続ける義務があると思う。

(一本杉)

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