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「狩猟民族は近視眼」 2007年10月23日更新

前回に続いて狩猟民族論となるが、猟に出かけたら獲物を持って帰ってくるのが狩猟民族である。農耕民族のように種を撒いたら収穫の時期まで待つようなことはありえない。むろん手ぶらで帰る時もあるだろうが、労働の成果はその日の内に手にするのが狩猟民族の基本である。そしてこうしたDNAが典型的に受け継がれているのがアメリカといえよう。

たとえば投資のリターンを考える場合、アメリカではどれ程早くどれ程の金額を手にできるかが判断の基準となる。ファンドで働いている人達を例にとれば、早い時期にリターンを手にすればそれが彼等の成績となり報酬も増える。これを繰り返すことによりあまり時間をかけることなく報酬がうなぎ登りに上っていく。当初はリターンが少ないが将来大きな利益となるような投資は、彼らにとっては魅力がない。なぜなら彼等はできるだけ早く報酬をアップさせたいからだ。

いま世界経済を揺るがせかねない問題となっているハイリスクの住宅ローンであるサブプライムローンにしても、典型的なアメリカ型の金融商品といえよう。
詳しく調べたわけではないが、低所得層に対して当初の2-3年間はかなりの低金利で住宅融資を行いその後金利が急激に上昇する仕組みになっているらしい。
つまり低所得層である借り手は数年を経ると莫大な金利負担を強いられることになり、その支払いに困窮するであろうことは当初から予想できた筈である。
住宅バブルが将来とも継続するのであれば問題はないのだが、日本でも経験したようにバブルは必ずはじける。そこで金融機関はこのローンを証券化して転売し、将来の利益の何割かを割り引いても問題が起こる前に利益を手にすることにしたわけだ。まことに狩猟民族らしい頭の良いやりかたである。まだこのローンの焦げ付きの総額がどの位になるのか分らないが、世界経済が不気味な暗雲に包まれてきたことは確かである。

株式投資にしてもアメリカではリターンを早く手に入れようとするのが普通である。保有資産は売却して現金化し配当を増やせと迫るし、三ヵ月毎に決算を発表させその都度業績が向上していないと経営者の無能をなじる。しかし企業経営は種を撒いて収穫を待つという意味で農耕民族に向いていると考えられる。
天候が悪ければ収穫が落ち込むのも避けられない。天候など関係なしに三ヶ月毎に業績を上げろと言っても、それは現場を無視した暴論であろう。ハーバード ビジネス スクールでも優良企業に共通しているのは顧客志向と原価意識がしっかりしていることだと教えており、利益を早く手にすることが秘訣だと
は教えていない。農耕民族国家日本は、アメリカの風潮に流されることなく、農耕民族としての生きかたを貫く信念を持つべきであろう。

(一本杉)

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