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「ガソリンスタンド」 2008年06月24日更新

皆さんのご自宅の周辺でも数多くあったガソリンスタンドが廃業したり転業したりでずいぶんと減ったと実感しておられるのではないでしょうか。実は最盛期には全国で七万件ほどあったガソリンスタンドは現在四万件近いところまで減ってきているのです。ところが一般の消費者はガソリンスタンドに関してほとんど知識を持っていないのが実情でしょう。そこでその歴史や抱えている問題などを少しお話しいたします。

ガソリンスタンド(以下GS)の歴史と言っても大体100年程度のもので、最初の頃のものはドラム缶にポンプとホースと車輪を付けただけで雑貨や薪炭の傍らに置いて販売していたようです。現代のような地下にタンクを設置した大型店が普及するのは戦後と言ってよいでしょう。特に1960年代に入ってから自動車の販売台数が大幅に伸び始め、これに伴いガソリンの消費量も急増を見せたので石油各社はGSの建設を積極的に行いました。と言っても石油各社ともに資本不足は否めない状態であったため、全国各地の資産家に声をかけてGS業への参入をうながしたのです。

当時は月間40KLのガソリンを売ればGSは採算に乗ると言われていたので、各社はたとえば月間4,000KLの増販を計画する場合100軒のGSを新設したのです。このようにGS 新設競争は激化し以後GSの総数はうなぎ登りに増加しました。そしてこれが後になってGS経営を苦しめ、ひいては石油各社の足をも引っ張ることになるのです。

バブルの崩壊とともに日本のガソリン需要も飽和状態となり石油各社も身を削る価格競争に巻き込まれることになりました。当然GSのマージンも減るのですが、ここで過去に小型のGSを量産した石油各社の政策が裏目に出るのです。
世界的に見るとGSの販売量が月間1,000KLを超える例がめずらしくありません。しかし日本では100KL以下のGSがほとんどでした。GSがリッター当り10円を超えるマージンを乗せると余程の好条件のGSでないかぎり市場競争力を失います。しかし10円では月間100KLで100万円の収入にしかなりません。
普通の小売業では売価の30%のマージンが通常ですが、現在のガソリン価格を170円として10円のマージンは約6%ということになります。昔はガソリン以外にもタイヤとかその他用品の販売で収入の不足を補ったのですが、これも現在では量販店に奪われています。それでなくともGSは他の小売業と較べて消防法の規制が厳しく投下資本の額が段違いに大きいのです。これではとてもやって行けません。つまるところ比較的販売量の少ないGSから姿を消すことにならざるをえないのです。

結論としてGSの数はさらに大幅に減るでしょう。少なくとも一万軒は減るのではないでしょうか。消費者の皆さんは今までが楽のしすぎだと思ってください。いつ行ってもがらがらの状態で買物ができる店が長続きするわけがないのです。消費者がGSの前で給油の順番待ちをするようになってはじめてGSも正当な利益を期待できる商店となるでしょう。スーパーのレジで並ぶのを当然と思っているように、GSで給油の順番待ちをするのは当然と思うような時代がそのうちやって来るような気がします。

(一本杉)

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