2010.08.11 のニュース
時評 温暖化対策税は流動的に -参議院のねじれ現象で法案難航-
経産省は政務3役による税制改正ヒアリングを開催したが、地球温暖化対策税(環境税)は、経団連、石油連盟、全石連、電事連などの各団体が創設には反対の要望を行なっている。この地球温暖化対策税の扱いは、昨年末の政府・税制調査会で「地球温暖化のための税については、今回、当分の間として措置される税率の見直しを含め、平成23年度実施に向けて成案を得るべく更に検討を進める」と税制大綱に明記されている。
すでに導入の方向が決まっていることもあり、民主党のマニフェストでも「将来はガソリン税、軽油引取税は地球温暖化対策税に一本化する。その際、地方財政に配慮しつつ、特定の産業に過度の負担とならないように留意した制度設計を行なう」としている。
そのためか各団体の要望に対しての政務3役からの回答もなく、意見を聴いたのみである。今後は年末の税調での審議となるが、温暖化対策基本法が廃案となったことから、国会での審議の行方も流動的となってきた。参議院選挙で民主党が敗北したため、ねじれ国会となり成案も難しくなってきた。民主党も9月の代表選に焦点が移り、菅首相が、そのまま続投するのか、それとも交代することになれば政治は混迷する。
この環境税(温暖化対策税)の創設は、自民党政権時代も環境省、農水省が構想を打ち出していたが、その都度、産業界、経産省が反対して打ち消していたもの。自民党時代は党・税調の場で決まるため、経済界は自民党議員に対して陳情を実施した。その結果、「引続き検討する」ことになっているが、創設は見送りとなっていたもの。
環境税の創設に対して石油業界では、まず政策効果や国民負担の検証を行なうべきであるとしている。その他の問題点として、①石油諸税等で5兆円の税金を納税しており、これ以上の負担には耐えられない、②さらにガソリン、軽油に課税することは交通機関が発達した都市と、車に依存している地方に過度な負担を求めることになり不公平が生じる、③使途が不明であり、すでに環境対策関連予算として1兆円を計上している、④増税による消費抑制効果は期待できない、⑤将来的に導入する際には石炭、天然ガスなど他のエネルギーにも公平に課税すべきである、などの点を要望している。
だが昨年9月、民主党に政権が交代したため、経団連、産業界などはパイプがなく、対応に苦慮しており、今回の税制改正ヒアリングでは反対を要望した『鳩山前首相が、90年比でCO2などの温暖化ガス25%削減の中期計画を打ち出し、世界に公約。温暖化対策基本法を国会に提案、衆議院では可決。この法案の中に温暖化対策税の導入の検討を織り込んでいる。参議院でも多数で可決するもとみられていたが、参議院選挙の日程から審議ができず廃案となった。廃案となったが参議院選挙で勝つとみられていた民主党が敗北したため、参議院はねじれ現象となり、法案の成立、国会運営も難しくなってきた。
法律と税制(予算)は別であるため、税制(温暖化対策税)が先行して衆議院で決まっても、参議院で予算関連法が自民党の反対で通過しないと予算は執行ができなくなるため温暖化対策法の扱いも難しくなってきた。