日刊ニュース

2010.08.13 のニュース

時評 原油高で石油開発は増益 ―今後の投資には巨額の資金が必要―

 石油開発企業の4~6月の決算が発表されたが、各社とも増益となった。国際石油開発帝石の経常利益は1226億円で前年同期に比べ342億円の増、純利益は320億円で60億円の増となった。石油資源開発の経常利益は62億円で15億円の増、利益は37億円で4億円の増となった。アラビア石油は、19億円の経常損失となっている。これはノルウェー北海のギダ油田で生産、200バーレル/日の販売をしているが、隣接するメイ油田、エジプトのスエズ湾鉱区で探鉱、開発作業を実施しているための先行投資によるものである。各社とも今後に巨額な投資案件を持っている。
 元売のセグメント別の石油開発事業でみるとJXHDの経常利益は174億円(全体の経常利益591億円)、コスモが88億円(152億円)、出光が営業利益で65億円(327億円)で45億円の増となっている。全体の利益に占める石油開発事業の比率は高い。過去においては石油事業は赤字であったが、石油開発、石油化学が黒字でカバーした時期もあった。
 ただし石油開発事業も経常利益でみると大幅となるが、純利益となると産油国への利権料など税金が高率であるため大幅な減少となる。プ口ジェクトごとに契約が違うため利益幅で差が出る。
 石油開発企業、元売の石油開発事業の業績が好調なのは、原油価格、ガス価格の値上がりによるものである。4~6月の原油価格は77.35ドルで前年同期の57.27ドルに比べて約20ドルの値上がりとなっている。為替は92.10円/ドルで前年同期に比べて5円の円高で相殺されるが、原油価格の値上がりが即、利益増につながった。
 原油価格の値上がりは、元売の業績ではコスト増でマイナスとなる。コスト増のユーザー転嫁が難しく、常に石油業界のかぶりとなるためである。ただ、原油の上昇は在庫評価益が発生するため、決算上は黒字となる。そのため、在庫評価益を除いた真水の利益で評価することになるが分かりにくい。
 原油価格が値下がりすれば、元売はコスト減となり、販売価格を維持できれば利益が確保され有利となる。しかし、コストが下がると、それ以上に販売価格を値下げすることになり、利益を吐き出すのが常である。それでも原油価格が急騰した場合の方が利益を確保でき、その後に原油価格が値下がりしても市況を維持することで利益を確保できるケースは多い。
 一方、石油開発企業は原油価格の高値維持を見込んで探鉱、開発に取り組んでいる。生産中のプロジェクトは原油価格が50~60ドルあれば採算に乗る。現在の原油価格は70~80ドルで推移しているため利益が確保できる。産油国が「財政面から原油価格は75ドルで推移することが望ましい」とみているが、石油開発企業も同じく原油価格の水準が70ドルを越えていれば安心である。
 石油開発は高い利益をあげているが、巨額な投資とリスクを伴うため、安定利益の確保と豊富な資金を持つことが不可欠である。探鉱、開発にも巨額な資金が必要であるが、メキシコ湾の原油流出事故もあり、生産、出荷設備に対しても環境、安全対策費などに巨額なコスト負担増が追加となっている。

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