2010.08.18 のニュース
石連 設備廃棄円滑化税制の創設を要望 -廃棄処理での損金繰延べ措置を-
過剰設備処理はエネルギー供給高度化法の「判断基準」が官報で告示され処理が実施されるが、石油連盟では、設備廃棄で発生する損失の繰越処理を可能にする「設備廃棄円滑化税制(案)」の創設を要望している。設備廃棄に際しては一時的に大幅な損失が発生することになり赤字決算となるが、その場合、欠損金の繰延べ、設備廃棄損失見積額等の早期損金算入を来年度の税制改正で要望しているもの。
このような税制措置は他の産業が実施していないため、石油業界を対象として新しい税制を創設することになる。そのため政府、関係当局の理解を得ることが必要であり、要望運動を展開するが厳しい状況にある。精製設備を廃棄することになれば、その設備の簿価はゼロとなり、土地代の評価額も減少、損失が発生する。決算が赤字となれば株価も下落することになり、株主から反発が出る。設備を廃棄する場合の撤去費の一部は、国の支援策が講じられるが、巨額な費用が必要である。
だが、精製設備が完全に撤去されれば、過剰設備が解消され、他の設備に生産能力が集約され高率的な生産が行なわれ、合理化メリットが生じる。現在、150万バーレル/日が過剰となっているため、設備処理が石油業界の最大の課題になっている。需要減で設備が過剰となり、需給が緩和して市況が下落したため元売各社の決算が実質2年間は赤字という苦しい経験をしている。最近の4~6月は製油所の定期修理で減産となり、精製マージンが改善したため黒字となり一息ついているが、過剰設備問題は続いている。
石油業界では過剰設備であることは、誰もが認識しており、総論では賛成している。だが、各論となると個別の問題が出てくるため反対の立場の企業も出てくる。設備廃棄となると、決算上で赤字が発生し、雇用、地元対策など多く問題点を抱える。現在、各社が過剰設備について計画を発表しているが、精製装置を廃棄するのは昭和シェル石油グループの東亜・扇町の12万バーレル/日であり、あとは能力削減となっている。今後の削減計画となると設備の廃棄、製油所の閉鎖を伴うものとなる。
この過剰設備問題に経産省が乗り出すことになった。エネルギー供給高度化法で重質油分解装備率を現在の10%から13%程度に引き上げることで解決を図ることになった。トッパー能力を削減するか重質油分解装置(コーカーかRFCC)の増強を求めているものである。重質油分解装置は需要の白油化に対応したものであるが、原油価格の重・軽格差が2ドル程度では増強しても赤字であるため増強は難しく、絡局、トッパー能力を削減することになる。
装備率が低い東燃ゼネラル、コスモの対応が注目されているが、今のところ検討中であり、方針は明らかにしていないが、計画を提示する期限が10月末までとなっている。
いずれにしても石油需要はピーク時の2000年度の2億4000万KLから09年度には2億KLを割り1億9000万KLとなっており、20年度には、さらに30%減少して1億3000万KLに減少する見通しとなっている。輪出に期待がかかるが、新興国、産油国で大型製油所の建設が進行中であり、逆に製品輸入が予想される状況となってきた。