日刊ニュース

2010.08.27 のニュース

時評 原油下落、円高でコスト安に ―市況維持で業績回復のチャンス―

原油価格が下落、為替が円高で推移しており、石油業界ではコスト安となり有利な状況となっているが、決算では在庫評価損が発生することになり、赤字となる心配も出てきた。24日のWTIは71.63ドルで前日に比べ1.47ドルの値下がりとなった。中東産は70ドル台となっている。
 4~6月の原油価格の平均(中東産)は78ドルであったため、大幅な下落となっている。為替は4~6月が93円/ドルであったものが、直近では85~84円で推移しており、円高による輸出産業の不振、株価の下落が心配されている。株価も大幅な値下がりで政府の経済対策を求める意見も出てきた。
 一方、石油各社の4~6月の決算は、市況の改善によるマージンの回復、在庫評価益の発生もあり、増益となった。上期(4~9月)の見通しでは、7月末の足元の原油価格、為替を前提に増益を見込んでいる。
 出光の場合は8月以降の原油は75ドル、為替が90円を前提に上期の原油価格(中東産)は76.6ドル、為替91.5円を見込んで増益を予測している。他社も同様にマージン確保を前提に前回の見通しを上方修正している。原油価格、為替の予測は難しく、これを当てることは不可能であるが、現状のまま原油価格、為替が推移すると決算の数字は悪くなる。
 石油業界にとっては、原油価格の下落、円高はコスト安で有利となり、市況が維持できれば、マージンが確保でき真水では黒字となる。ただ、原油価格が下落すると在庫評価損が発生するため、決算の数字では赤字となる。
 石油各社の決算は、原油価格次第で大きく影響するため分かりにくい。決算は赤字であるが、在庫の影響を除くと真水では黒字である。逆の場合は、決算は黒字であるが、在庫の影響を除くと赤字となる。双方とも黒字、赤字というケースもあるが、原油価格が常に変動するため、このような状況が繰返されている。
 いずれにしても、原油安、円高はコストが安くなるため、石油業界にとっては好材料となる。原油価格が値下がりすれば、先物、業転市況は値下がりするが、仕切価格は直ちに値下がりしない。末端市況も値下がりするがタイムラグが生じるため、市況を維持すればマージンは確保できる。その意味では原油価格下落時は利益が確保できるチャンスとなる。
 過去においては、販売業者も利益を確保したが、最近は原油価格の下落分以上に先取りして末端価格を値下げし、利益を吐き出すケースが多い。先取り値下げや、仕切価格の値下げ以上に末端市況を値下げせずに維持することが重要である。だが、販売業界は過当競争体質にあるため安値販売となる。
 販売業者にも、原油価格の変動が大きく影響する元売の決算方式は、ようやく理解を得たようである。元売の決算も実質赤字となり体力も弱くなり余裕がなくなっている。さらに販売業者に対しては、業転市況に連動する週決めの新体系が導入され、浸透してきたため、元売に支援を求めることが難しくなってきた。仕切価格の事後調整は廃止されており、元売の利益構造も分かってきたのと、販売業者も自己責任を求められていることが浸透してきている。

ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE