日刊ニュース

2010.08.30 のニュース

排出権問題審議入りも -世界の状況変化で慎重論も出る-

排出量問題は取引の導入を前提に産業構造審議会・地球環境小委政策手法WGと検討タスクフォースの合同会議で制度設計について審議されているが、産業界は反対しており、実効性のある方策が決まるのか、疑問視されている。電事連、鉄鋼連盟などからヒアリングを行なったが、温暖化対策税(環境税)の創設などを含めて反対意見が出た。制度設計の背景となる温暖化対策基本法が廃案となっており、国会審議も見通しがつかず、中だるみ状況にある。
 法案は衆議院を通過したが、参議院では、審議ができず時間切れで参議院選挙に入り、廃案となった。鳩山首相から菅首相に代わり、参議院選に臨んだが、民主党が敗北したため、振り出しに戻った。国会も休会となり、政局は9月15日の民主党の代表選に移った。その間、鳩山前首相が提唱していたCO2削減の中期目標、温暖化対策の議論は後退、菅政権が鳩山イニシアティブを引き継ぐのかも不透明となっている。秋の国会には、必ず提案、国際公約であるため成立を期すとの見方もある。
 だが、温暖化対策を巡っては「国際的な議論が大きく変化しており、各国の政策手法の導入実績や検討状況を把握すべきである。アメリカも導入を巡っては国内での議論に時間を要している。」、「世界各国の公平な目標設定が前提であり、この実現が困難になっている。EUでも、公平なキャップの割当ての問題や投機の対象になるなどの問題点に批判が出ている。」など状況が大きく変化しており、日本のみが先行することで方向を決めることは不公平になるため慎重に審議すべき、との意見も出てきた。
 委員からは、排出量取引の導入について、①CO2削減にどういう政策を充てれば一審有効なのか、温暖化対策全体の枠組み中で考えるべきである。仮に排出量取引制度で実効的な機能が発揮されなくても、他の政策で削減できればよいことから政策全体のバランスをとることが重要である、②日本では自主行動計画で成果をあげており、これを評価して、政策的手法として位置づけるべきである、③排出量取引と税との関係を議論すべきである、④「産業と環境」という論点と同時に「金融と環境」という視野を持ちつつ全体を見渡して検討すべきである、などの意見が出ている。
 産業界からは、①国際競争力が失われ製造拠点が海外に移転、雇用問題、軽済成長に影響する、②負担増は設備投資や技術開発投資の資金を失う、③産業界の問題でなく、広く国民の負担となることを分かりやすく説明、理解を得ることが必要である、など温暖化対策、排出量取引と経済成長の整合性を求めている。
 基本となる25%削減の中期目標に対しても産業界は不信感を持っており、法律が成立するか否かも不透明であるため、この議論も真剣みを欠く状況にある。民主党は現在、代表選が焦点となっており、来年度予算、税制改正も後回しとなっている。そのため排出量取引問題は、先送りとなりそうである。代表選で新体制が決まり、政策論はその後となる。
 予算、税制改正も新しい政調会で議論することになっているが、まだメンバーも決まっていない。昨年と同様に時問切れで決着ということになりそうである。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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