2010.09.21 のニュース
「七ヶ宿町SS」誕生を祝す
宮城県西南端の七ヶ宿町。江戸時代は睦奥や出羽の大名が参勤交代に使う街道の宿場町として栄えたというが、いまの人口は2千人を下回る典型的な過疎地。経営者が高齢を理由に町役場などがある中心地区のSSを4月に廃業、町内のSSは廃業したSSから10キロ以上も離れた1ヶ所だけとなった。住民にとって生活の足である自動車の燃料、生活基盤である農業用の石油製品、高齢者比率が4割を超し、かつ降雪地帯の生活を維持する冬場の灯油配達の確保が極めて制限されることが予想されたのだが、元運営者から同SSの土地や給油施設の寄付を受けた町が、無償貸与を条件に運営者を探したところ、地元企業が名乗りを上げ、今月から「七ヶ宿町SS」のオープンが実現した。NHKや一般紙はこぞって過疎地におけるSSの重要性や「安堵した」住民のコメントを大きく取り上げた。
SSは地域の石油製品の供給拠点だが、過疎地ではSSに対する切迫度が強い。交通手段は自動車にほぼ限定され、経済の主体は農林業。冬の寒さが厳しいところも多く、都会の人には想像できないほど、ガソリンや灯油が生活と密接にかかわっている。過疎地では石油製品だけでなく、食料品や日用品の確保も必要不可欠だが、もしSSがなくなったらなにが起こるのか。生活の糧を得る生産、冬季生活を可能にする暖房、そして移動までも困難となる。その結果、住民の流失が加速し、過疎化が極まっていく。こうした危機感が元経営者のSS寄付、それを受けての町の運営者探し、それに応えた地元企業の出現につながったのだろう。宮城石商も「七ヶ宿町SS」の誕生に尽力したのは言うまでもない。
SS過疎地は離島も含め全国に散在する。地域の人々の生活を維持するため、SS存続が不可欠との認識は広く浸透してきた。全石連のSS過疎地に関する問題提起、それを受ける形で石油協会がリサーチに着手し、エネ庁のタンク入れ換え費用の一部補助制度も創設された。地域の不安は住民によるSS運営という新しいスタイルも採用させているが、福島県に期限付きだが価格補助、愛知県に地域最後のSSを買い受け民間委託する自治体を出現させた。「七ヶ宿町SS」は元運営者の好意と新運営者の出現という幸運があったとはいえ、自治体がSS過疎地問題に取り組むことの重要性を改めて示したと言えるのではないか。