2010.09.22 のニュース
円高分は製品市況に反映 ―元売が有利、開発は不利に働く―
政府は15日に為替介入を行なった。14日には一時82円/ドル台まで円高が進んだのを受けたものである。政府は10日に、円高不況を回避するためとして低炭素型産業立地支援、新卒者の雇用対策、家電エコポイント制度の延長などの経済対策を打ち出したが、民主党の代表選と重なり効果もなく、政治の空白が続いているとの批判が出ていた。
円高は、同じ石油業界でも精製・元売は有利となる一方で、石油開発業界、元売の石油開発部門は不利となり、明暗を分けて業績に反映する。
円高は精製・元売からみれば、円/ドルで換算すると原油代が値下がりすることになり、コスト安となるため有利となる。さらに為替差益も発生する。原油価格はWTIで75~77ドル/バーレルという水準で推移しているため、9月初めの72ドルに比べると値上がり、円高分と相殺される。
だが、元売は円高による原油代の値下がりで円高メリットが享受できる。為替は円高であるが、原油価格高と相殺されているのと、コストの変動は、先取りして常に石油製品市況に反映されているため、円高によるコスト安分は還元されていることになる。その結果、ガソリン市況は、小幅であるが連続して16週値下がりしている。
仕切価格の設定は、業転市況にリンクする週決めで実施されており、為替、原油価格の変動が常に反映されていることになり、この値決め方式が浸透していることもあり、ユーザーからの円高還元を求める声は出ていない。
それよりも、円高による輸出産業の不振、経済の低迷が続き、ようやく景気の回復の兆しがみえてきた時期に、円高不況の到来が心配されている。国内の石油製品の需要もガソリンを中心に回復が見込まれているだけに、円高不況による需要減は避けたいところである。販売減となれば、需給が緩和して価格競争が展開され、市況の下落、業績悪化という悪循環が心配される。
元売、販売業者としては、円高を先取りして値下げすることなく市況の安定化に専念することが重要である。4月以降、需給も安定しており、この状況で推移すればマージンは確保されそうである。
一方、石油開発業界は、円高の影響を直接受ける。ドル建ての原油価格は75~77ドルという想定の範囲内で推移しているため、利益は確保できるが、円高によって利益は圧縮される。現在の原油価格水準で推移すれば、ほぼ予想の利益は確保できそうである。今後の探鉱・開発投資は、コストが高くなってくるが、継続して実施、常に埋蔵量を増大させることが石油開発業界の宿命であるため利益確保は不可欠である。
将来に向けて開発の手を緩めることはできない。探鉱から発見、生産までのリードタイムが長いのと、失敗も多くハイリスクであるため、利益を確保しながら投資資金を調達することが責務となっている。
元売の石油開発部門も利益を見込んで計画を遂行している。最近は本体の石油事業部門で利益を確保しているが、それでも石油開発部門での利益を大幅に予測しているため円高による利益減となると業績の修正となる。それでも石油事業でマージンを確保できる状況が続けば、連結での利益は確保されそうである。