2010.10.13 のニュース
灯油は低在庫で推移 ―価格交渉を有利にする狙いも―
灯油、ガソリンの在庫は低位で推移している。石油連盟の週動向調査(2日)では灯油が259万KLで前年に比べると約60万KLの減、ガソリンは186万KLで190万KLを割り込む低水準である。灯油の在庫水準は低いが、シーズン入りを前にして、価格交渉を有利に運ぶため供給増を避ける狙いもある。
灯油在庫については、夏場での積み増しが前年に比べて遅れている。灯油需要の減少を見込んでいるためだが、それにしても在庫水準が低い。寒波が早めに到来すると供給不足が心配されるが、その場合は増産、輸入でカバーする。
灯油の販売は、ガス、電気などへの燃料転換が進み、大幅な減少が続いている。燃料転換が一巡したかにみえたが、オール電化攻勢はまだ続いている。業務用のボイラーもガスヘの転換が続いているが、その要因としては、08年の原油価格の急騰があげられ、燃料転換を加速させたことになった。原油価格(WTI)は08年1月が90ドル台であったが、7月に145ドルとなり、その後は一気に急落して年末には30ドルまで値下がりした。その結果、石油離れが加速、石油の需要は減少して戻ることはなく今日におよんでいる。
石油(灯油)は高値という実感をユーザーに与えることになった。灯油は他の燃料に比べて一番安く、便利であり優位にあったが、原油価格の急騰で、その優位性が崩れた。灯油はガス、電気に比べると安定供給面でも劣ることになり、重くて持ち運びに不便というマイナス面が強調されることになった。この灯油高を機にオール電化、ガスの攻勢が活発化したため、灯油販売は大幅な減少となっている。
販売業者(SS)も都心でのマンションでは灯油ストーブの使用が禁止となるなど灯油の販売量は激減している。灯油を販売するのは、郊外部、寒冷地のSSに限定されることになった。球場は灯油の販売で利益をあげてー息つく、というSS経営は成立しなくなってきた。その結果、SSはガソリン販売のみで経営することになってきたが、ガソリンは価格競争で市況が下落し、マージンは減少、経営難に拍車がかかり、廃業、倒産が増加する要因となっている。
それでも郊外寒冷地のSSでは、冬場の灯油販売には増販を期待して商戦に臨むことになる。ガソリンのマージン減による利益減分を灯油の増販、増益でカバーすることを狙う。
灯油は販売減が続いているが、天候に大きく影響を受けるため、灯油商戦の見通しとなると難しい。灯油商戦のポイントはシーズン入り前の10月末の価格交渉となる。ここで決定された価格が、ほぼシーズン価格となる。シーズン途中で原油価格が急騰すれば末端市況は値上げすることになるが、ユーザーとの交渉となると難しい。シーズンに入って仕切価格が値上がると、大半は販売業者がかぶりとなるため、シーズン入りでの価格設定が勝負処となる。
元売も立場は同様であり、シーズン入りの時点で供給増の状況では相場づくりで不利となるため、在庫を抑えている。規制時代は9月末の在庫数量は、行政指導での確保が義務付けされていた。しかし、自由化されたのを機に、各社が自社の販売計画に基づき在庫を持つことになり、今シーズンは低在庫で臨んでいる。