日刊ニュース

2010.10.18 のニュース

変化際立つ灯油~小売市況

最近の原油相場は9月平均比でリットル3円近く上昇しているが、肝心の灯油小売価格は、下げ止まったガソリンを横目に、実に20週連続で値下がりが続いている。近況相場を裸の正味価格で論じると、中東産原油指標はリットル42円代半ば。一方の灯油は、卸指標では京浜現物は海上55円前後、陸上56円前後、京浜海上先物の最期近も55円台だ。
 前年の10月市況は、偶然にも原油はほぼ同値レンジの42円前後に対して、現物は海上49円弱、陸上48円台前半だった。なにが様変わりしたかは一目瞭然で、精製元売の原油に対する灯油粗利が、前年のわずか7円前後から、今期は13円強へと、ほぼ2倍に達しており、大きく上昇していることがわかる。近年では最少という300万KL未達の9月末在庫など、タイトな需給が精製元売の粗利を、上方へ上方へと力強く牽引する原動力となっている。
 緩い需給を生じさせた事業自得とはいえ、前年の採算割れ卸市況は、元売の通期業績を実質大赤字へと、奈落の底へ突き落としたが、今期の灯油商戦ではSS小売市況が、その淵に立っている。
 卸が原油に対して9~10円ほど割高で推移している分、そのままを小売価格に転嫁できていたなら並、という判断となるが、5円に届いていない高知や和歌山など西日本の大勢は、現小売価格では期初から前年割れの採算性に低迷している。大消費地の北海道や岩手、富山など北日本でも採算性の悪化が生じているところが多い。       300万KLに届かない在庫で期初を迎えた元売は、今冬灯油に対しては、相当な覚悟で臨んでいると見てよい。割安とはいえない海外市況となっていることから、製品輸入のウインドーも大きく開かれることはないだろう。商社など卸関係者も高い緊張感で市場動向をにらんでいる。
 やや早計な判断となるが、灯油商戦は新たなステージに入ったのかもしれない。それほどまでに、季節商品としての採算性を堅持する意思が強く感じられる。
 灯油の卸は、すでにガソリンよりも割高な市況を形成し、格差は拡大傾向にある。にもかかわらず70円前後の値付けを行うSSは、125円未達のガソリン小売を行うに等しい。SS経営者は、この激変事態に嗅覚を生かして、機敏に小売市況を再構築すべき責任が生じている。

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