日刊ニュース

2014.05.19 のニュース

元売、業績のV字回復を見込む-足元では製品マージンが増加-

 石油各社の3月決算によるとコアの石油事業では、在庫影響を除くと大幅な赤字計上となったが、26年度見通しでは、適正な製品マージン確保からV字回復、黒字転換を狙っている。大幅赤字の要因は、コスト(原油価格、為替変動)が上昇したが、需給が緩和したため転嫁できず、マージンが低下したためである。
 原油価格はドルベースでは値下がりしたが、為替が前年比約17円/ドルの円安となり、円ベースでのコスト増が発生、未転嫁となったことで赤字となった。ちなみに原油CIF価格でみると、24年度平均が約6万円/キロリットルであったが、25年度が7万円と1万円(10円/リットル)値上がりしており、このコスト増が未転嫁となったことになる。原油値上げ分は転嫁ができるが、円安によるコスト増の転嫁は難しい。
 石油製品は市況商品であるため、供給増となり値下がり局面となると、途中で下支えしても下げ止めは難しく、底値まで落ち込み、その後の反発を待つしか方策がない。マージン減の底は1~2月頃とみられ、1月の原油CIF価格は、7万5000円/キロリットル(原油113ドル/バーレル、為替105円/ドル)の高値となり、3月は7万円と値下がりしている。足元のFOB価格とは1ヵ月以上のタイムラグが生じているため、コスト安の局面となっており、販売価格(仕切価格)が維持されればマージンは増加する状況となってきた。
 元売サイドでは「石油製品マージン(原油CIF価格と仕切価格との差)が9円/リットル程度であったものが、
足元(4~5月)では3円程度増加して12円となり、黒字回復している」と、26年度入りではマージン回復を見込んで黒字を予測している。
 26年度で黒字回復が見込まれる条件としては、①高度化法による設備処理により需給が適正化され、適正マージンが確保できる、②新体系の導入によるマージン増加が見込まれる、などの点があげられている。
 設備処理は3月末で完了しており、同時に製油所の定期修理と重なり、需給タイトによる業転の値上がりが見込まれている。業転が値上がりすれば、仕切価格、末端市況が値上がりするためマージンは確保される。
 また、新体系の打ち出しは、今までの業転リンクからコスト変動を加味したものに変更となるため、コスト割れの赤字は解消が見込まれる。だが、需給タイトによる業転の値上がりが前提となるため、思惑通りに市況が形成されるかがカギとなる。
 各社の業績見通しをみると、JXの3月期決算では、在庫評価益を除く石油製品の経常損失は775億円となったが、26年度では470億円の黒字を見込み、1245億円の増加を予想している。出光は営業損失が221億円となったが、26年度では440億円の黒字を見込んでおり661億円の改善となる。コスモの石油事業では414億円の経常損失となったが、26年度では30億円の黒字を見込み、444億円の増益を予想している。精製専業の富士石油は、昨年4~5月の期間に4年に1度の大型定修を行なった結果、生産量が12%減となり、さらにマージン減で経常損失が101億円となったが、26年度は経常利益34億円を見込んでいる。原油、為替を25年度の横ばいと前提しているため、在庫影響はなく真水の利益となる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
〒112-0004 東京都文京区後楽2丁目22-3
TEL:03-3814-4728
FAX:03-3814-4745
ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE