2014.05.22 のニュース
総合エネ調「系列BCP」を審議 会社全体でのサポート体制-危機対応のレベルアップを期待-
総合エネ調・資源・燃料分科会(第6回)・石油・天然ガス小委(第4回)は、19日に開催され、「緊急時供給体制の確立(ネットワーク構築)」としての「系列BCP(業務継続計画)」の整備、格付け評価とレベルアップを中心に審議した。これはエネルギー基本計画でも提示されているものである。石油精製元売各社のBCPは、製油所からSSに至る系列供給網全体を包含した計画であることが必要である。元売各社は、石連策定のガイドラインに基づき、首都直下地震や南海トラフ巨大地震等を念頭に置いた「系列BCP」を策定した。これに対して資源エネ庁は外部有識者で構成する「系列BCP格付け審査委員会」を設置し、外部有識者委員と各社の面談を通じて各社系列BCPを審査した報告が示された。初の試みである今回は、「試行」の位置づけであったが、各社系列BCPの「文書としての出来栄え」ではなく、「危機管理部門だけではなく会社全体でのサポート体制」「実行可能性」等に重きを置いて評価した。今後も業界全体のレベルアップにつなげるべく継続する。各社においては、この審査プロセスを通じて把握した自社系列BCPの課題を踏まえ、危機対応の更なるレベルアップを進めることが期待される。
主な個別項目の評価結果をみると、代替供給では、各社とも、製油所が被災した場合の、他地域の製油所での増産や、他社・海外からの外部調達の増強について基本的な対応方針は策定されているが、今後は具体的なシミュレーションや訓練により実効性を高めることが必要である。
次に製油所の早期復旧については、各社とも、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震を想定した減災(被災リスクを低減させる)対策を策定し、政府の補助金も活用しつつ具体的な工事を進めていることが確認された。しかし、被災した場合の復旧のスピードを速めるべく、早期復旧に必要な資機材の備蓄等の対策をとっている社は確認できず、今後の課題である。
系列SSへの営業対応については、各社とも、「中核SS」を含む系列内の災害対応SSへの優先的供給の方針を示した。
「優良」と評価した2社は、被災地にある「系列SS」への十分な応援要員の派遣に向け、①被災後に直ちに応援要員を招集する仕組みを有する(実際に大量に派遣した実績もある)社、②平時から応援要員を指名し移動手段も準備してある社であった。
「良」と判断した社の中には、支援対象SSを絞り込み過ぎている社もあり、被害が大規模・広範囲の場合のシミュレーションや訓練を通じた課題抽出や実効性強化が課題となっている。
格付け審査委員会の評価としてまとめてみると、
1.BCPの実効性の確保
企業の「BCP」は、「作文」に終わらせない努力が必要である。必要な協力会社・関連会社等も巻き込んだ実効性の高い思考訓練の繰り返しが必要である。
2.目指す「回復目標時間」の更なる向上
被災した製油所において50%以上の入出荷機能を回復させる目標時間は、ほとんどの社の目標時間は「1日」から「14日」の間に分布されたが、「7日」と答えた社が最も多かった。トップランナーを目指した更なる向上が必要である。
3.代替本社での業務実施の具体的な準備
情報システムの二重化、代替要員の確保、必要なデータの準備等が必要であり、シミュレーションなどを通じて有事の行動(需給調整機能や受注・配車業務等)を具体的に想定し、対応を検討することが必要である。
4.系列供給網全体を包含した「全体システム」のデザインと訓練
例をあげるなら、タンクローリーの確保に関する、協力運送会社との協議・訓練、直営でない系列SSへの応援体制について、要員の確保・訓練が必要である。