2014.05.22 のニュース
20世紀仕様卸への警鐘(中)
アジアのガソリン市況は2013年度、5月に国内比5・8円高を記録したのを筆頭に、国内よりほぼ常時高採算にあり、平均でも2・3円高を記録していた。軽油でも年度平均3・9円、灯油に至っては4・9円ものアジア高があったから、仮に元売がこの大きなスプレッドを迅速に活用でき得る輸出仕様の出荷機能を備えていたら、13年度決算の正味赤字は大きく改善されていただろう。
この大きなビジネスチャンスは、実は軽油やジェット燃料では、迅速かつ大きく生かされていた。13年度輸出量はジェットが前年比16%増、140万㌔㍑増、軽油は62%増、400万㌔㍑増の各1040万㌔㍑超となった。ガソリンも52%増、60万㌔㍑増の175万㌔㍑となったが、合計で灯油の内需を超えた前出の2油種とは大きく見劣りする。
実は13年度の生産量は、ジェットは前年比16%増の1540万㌔㍑、軽油も11%増の4330万㌔㍑もの数字を記録する高度成長油種となっている。内需が細る一方のシナリオ享受せざるを得ない我々SSとは異なり、元売にはアジア市場がある。
かつて国内に封じ込められていた欧米メジャー系だった2社を含め、今後の元売の成長戦略は、その販路として近隣アジア市場を目指す。ただし、アジアにも自前の製油所が続々と産声を上げているから、いずれはそれら最新鋭製油所とのコスト競争力が試される。これらの国々とのTPPも迫りつつある。
フレキシブルに輸出ウインドウをフル活用できるようにすることは一朝一夕には不可能、ということが現実だが、それは事業再構築の優先順位の問題であろう。現実に、10年度には高レベルだった13年度よりも45万㌔㍑多い220万㌔㍑のガソリン輸出の実績が残っているのだ。
仮に、当時と同量のプラス45万㌔㍑が輸出に充てられていたら、系列仕切りを下回る小売価格の温床となる底抜け業転価格は出現しなかっただろう。拠点数を増やし続けるPBの増勢にもブレーキがかかったかも知れない。
冒頭に用いたアジア市況とは、指標であるシンガポール相場を指す。その相場は原油変動とアジア域内の製品ごとの需給で決する。日本だけが製品相場から離れて、ガラパゴス化のような卸体系とした場合、系列SSの多くが、輸入ガソリンに屈してしまうリスクを持つことになる。