日刊ニュース

2010.10.26 のニュース

温暖化対策で描く社会像に注目 

先の通常国会で時間切れ廃案となった地球温暖化対策基本法案が今臨時国会に再提出された。20年に温室効果ガスを90年比で▲25%とする低炭素社会への移行を目標に掲げつつ、経済成長、雇用安定、エネルギー安定供給確保の同時実現が謳われている。特に重要な具体的施策には「地球温暖化対策税」「国内排出量取引制度」 「再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度」を盛り込んだ。基本原則の中には経済活動・国民生活に及ぼす効果や影響についての理解を得ると明示。しかし、理想と現実のギャップは大きい。地球環境を守ることに全く異論はないが、国民や企業の負担に対する説得力ある、合点のいく説明がなされているとは言いがたい。石連などの産業界は、中長期目標ありき、個別施策導入ありきの同法案に遺憾を表明し、実現可能性、国民負担の妥当性、国際的公平性を踏まえた国会審議を要請した。
 20年時点での排出量目標とエネルギー戦略に対する主要政党の主張をみてみると、国民新党は数値目標の具体的言及がなく、社民党は「90年比▲30%。自然工ネ比率20%。脱原発」、自民党は「国内対策で05年比▲15%。最終エネ消費量の20%を再生可能工ネに。石油等基幹工ネの確保。環境税は多重なエネ課税の見直しと併せ、目的税として望ましいグリーン税制に向け慎重に検討」、公明党は「弱年比▲25%以上。1次エネ供給量の15%を再生可能エネに」、みんなの党は「90年比▲25%」などと掲げている。
 環境省系の研究所が再計算した温室効果ガス排出量の試算によれば、国内削減のみで▲25%も可能で、対策費用はエネルギーの節約効果により20年に半分、弱年には全額回収できるとした。だが、原発9基新設・設備利用率85%(09年は66%)で90年比▲8%相当という楽観的な前提が崩れたときの影響は甚大だ。
 環境新産業が雇用受け皿となり、成長と環境の両立につながるロードマップを描こうとしているが、とりわけ成熟産業、ごく普通の中小企業に身を置く者にとって、その道は元気に駆け上がれるような登り坂には見えず、平坦とも思えず、下り坂の凸凹に揺られるイメージが強い。例えば、10人で1億円の利益を稼ぐ企業と、100人1000万円の利益を得る企業。10年後、社会はどちらをより高く評価し、国民はどちらをより多く望むのだろうか。

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