2010.11.01 のニュース
設備処理計画提出後に経産省と調整 ―法律での実施には反発も残る―
29日、石油各社は、エネルギー供給高度化法の判断基準に基づく精製設備の処理計画について、経産省に計画を提示した。だが、提出された計画は最終決定ではなく、今後、経産省と調整するケースが多くなっている。各社の計画は経産省から公表されることなく、経産省との調整がつき、自社の判断で計画通り実施されることが決まった段階で発表となる。
高度化法の運用で重質油分解装置の装備率を13%にする判断基準が決まり官報に告示されたが、時間的な余裕もなく、製油所の廃棄を伴う計画は簡単に決定ができず、計画案ということになっている。計画案を提示して今後は経産省と調整することになる。
設備処理もトッパーの能力を削減するケースは各社の判断で対応が可能であるが、製油所の廃棄を伴うことになると簡単ではない。今後の設備処理となると、大半が製油所を廃棄することになるため、雇用、地元対策、株主の徐却損の扱いなど多くの
点で問題があり時間がかかる。
製油所がなくなれば社員は働く場所を失うことになり、解雇を伴うため労働組合との調整が必要となる。
まず、組合の了解を取り付けることが最大の問題となる。さらに配置転換、雇用の斡旋などの方策が検討される。地元対策となると製油所には関係会社も多くあり、これらの社員の雇用問題も絡む。また、地元の市町村の税収が減少することになり、財政難という問題も出てくる。
製油所の廃棄となると、企業自身の財産を失うことになり巨額な損害発生する。株主が反対するケースもあり、了解を得ることが重要となる。設備を廃棄すると用地の不動産の価値もなくなり評価損が発生する。さらに、徐却損が発生するため大幅な赤字計上となり株価が下落するなどのマイナス面が多く、経営が一段と悪化する。このようにみると、製油所の廃棄には多くの調整と時間がかかる。
製油所を廃棄し、他に精製能力を集中して効率化を図ることで競争力を強化することが目標であるが、その反面では大きな犠牲を伴うことになる。それでも、あまり時間をかけることは問題を先送りすることになり、3年間の期限がついている。
さらに石油業界が問題としている点は、自由化の時代に法律で設備処理を実施することに強い反発が出ている。過剰設備は、石油業界では総論では賛成であり容認するも、各論では反対である。また、法律で規制することは予想していなかったため、今まだに納得できないとの意見が残っている。営業の自由を疎外するとの声もあるが、すでに法律で施行されており、反論が通じないことに苛立ちもある。しかも判断基準の決定に際して、まったく審議されず、一気に石油部会の場で決まったことには問題であるとの指摘もある。設備問題は独禁法に抵触するため、議論ができないことになり、経産省のペースになったとの見方もある。
過去の設備処理は、石油業法という厳しい法律が施行されていた時代、法律ではなく行政指導で実施していた。しかし、今回はまったく逆で自由化の時代に法律で設備処理を実施することになっていることは、予想外の展開と受止められ、不満が残っている。