2010.11.11 のニュース
原油高不感症に陥った市場
ここ1週間の原油高に対する現物市況の反応の鈍さは、なにを我々に突き付けているのだろうか。
ガソリンの場合、コストの高い陸上が、コストの安い海上物に対して2円前後も割安な状況が生じたこと。割高な海上にしても、原油高の速度に追い付いておらず、精製元売粗利は11月入りとともに急縮、一気に10円割れとなっている。陸上は9円前後だ。ここから2円強の石油石炭税を差し引くと、いわゆる採算割れという字句が出現する。これが9月末まで実質大増益に沸いた元売業績の近況だ。
業績悪化は元売のみの話ではない。小売市況の近況は、現在と同レベルの円建て原油価格が出現していた6月中旬比で、ガソリン小売価格は平均4.2円割安なレベルに沈没してしまっている。この半分は卸価格指標の低迷によって元売に帰属するものだが、残りの半分はSS小売業界の粗利マイナスとして、我々の経営をマイナスに引っ張っている。
北海道や東北、さらに九州の9道県では、当時から6円以上も沈没しているから、SSの被りは4円を超えることになる。大型セルフの新設、元売系列の量販店がPB化など、地域による安値要因はそれぞれあるのだろうが、自身の粗利を削る消粍戦の先に、どんな経営ビジョンがあるのだろうか。
海上高・陸上安の逆転した卸価格出現の意味するところは、先高シグナルであるとともに、もうひとつ販売不振という意味合いがある。平均4.2円安となったガソリン小売価格に対して、軽油は3.2円安にとどまり、灯油に至っては1.9円安に踏ん張っている。ガソリンの凋落ぶりから推察すると、割高に居座るフォーミュラとなった純正・系列取引を回避する流れも生じているのだろう。かねて予期できていたこととはいえ、これは、現仕切りに対する卸市場が突き付ける問題提起でもある。
10月のガソリン販売が、3ヵ月ぶりに前年割れとなったことを本紙は速報したが、SSのガソリン収支の近況は、前年割れの数量販売と、平均2円少なくなった粗利の掛け算となってしまっている。商圏内の安売SSの値下げを意識するよりも、まず自身の粗利を修復することが至上命題だ。
原油高は国内の特殊事情で沈没した元売収益にも、SS収益にも容赦しない。